| photograph;西原麻知子 text;水本桂鶴子 / 九月一・二日 渋谷On Air West 2DAYS
約束の日、ザ・ピスキッズに会うために約束の場所を目指す。突然降り出したスコールみたいな雨が渋谷の街を濡らしている。彼らの2デイズライブが行われる会場「On
Air West」前。そこには、ルーズソックスにミニスカートの女子高校生達が、色とりどりの傘に包まれて彼らの楽屋入りを待っていた。5人ほどのグループを捕まえて「みんなピスキッズのファンなの?」と尋ねてみる。トーンの高い跳ねたような明るい声でひとりの女の子が答える。「そう!すっごい楽しいバンドなんですよ、今日は取材ですか?いいなあ、キナミさんに宜しく言って下さいね」。どうやらベースのキナミさんのファンらしいが人見しりを知らない屈託のなさが眩しい。「ねえ、まだ彼らは正式にはデビュー前でしょ?どうやって知ったの?」「チラシですよ、チラシ。なんかピーンと来たんだな」女子高校生のアンテナ恐るべし、である。
ザ・ピスキッズは1988年に同級生が中心となって結成されたバンドだ。全員の共通アイドルだったチェッカーズみたいになりたくて、人数も構成も憧れのチェッカーズと一緒、コピーバンドとして彼らの歴史はスタートする。大阪を中心にライブ活動を行い地元ではちょっと有名な存在だったが、昨年上京するまでは、仕事をしながらの二足の草鞋でバンド活動を続けていた苦労人でもある。担当者に案内されて彼らの待つ楽屋へと向かう。華やかなステージの表と裏を隔てる一枚の扉を開けると、階段に腰掛けてサックスの練習をするヒデキさんがいた。取材の旨を伝えて挨拶をすると「よろしくお願いします」と頭を下げてくれた。デビュー前の初々しさが何だか微笑ましくて、つい「こちらこそ」といつもより深く頭を下げてしまった。「すみません、突然の雨で、パンツ一丁で楽屋にいるメンバーいるから、もう少し待ってもらえますか?」業界初だという、雑誌の「付録CDデビュー」を果たしたザ・ピスキッズ。その写真から感じられたお茶目な出迎えに私は、女子高生のコメントを思い出していた。インタビューに応えてくれたのは、主にリードボーカルのケンタローさん、横から激しい突っ込みを入れるのがサイドボーカルのジョニーさん、物静かなギターのヨースケさんに、ニコニコ顔のドラムス、ハセさん、暖かいフォローに回るのは、もうひとりのサイドボーカル、ケンジさん。「チェッカーズの魅力って何だったの?」ケンタローさん曰く「バンドとしてテレビに並んだ姿が本当にかっこよかった。団体芸でかっこいいのが魅力なんです」。チェッカーズに憧れ結成して八年、今では口コミでどんどんファンが増え、彼らは東京のライブでも五百人以上の観客を動員するという。全員が曲作りをこなし、この日のライブも全てオリジナルで構成する実力派、「バンドでかっこいい!」にこだわり長年かけて築いたチームワークと「あ・うん」の役割分担は絶妙であった。ライブの方も、ボサノバあり、ロックンロールあり、スカありとバラエティ豊富。特に横一列に並んでのアコースティックバージョンで聴かせる「Tears
in the Rain」と「ヤシの木の下で」は、コーラスワークも鮮やかなものだ。 大阪という街に鍛えられたおしゃべりのセンスも、これからメジャーデビューを果たす新人バンドとは思えないほど流暢なもの。初日には「夏の終わり」2日目には「好きな女性のタイプ」とテーマを決めてメンバーが語る長いMCコーナーも、7人が現在共同生活をしているというマンションで一緒に話を聞いているような気さくさが漂っていた。彼らは今、一番充実した時期を過ごしているのかもしれない。憧れのバンドをまねることでスタートしたアーティストへの道。長い間続けてきたライブ活動が認められ、いよいよメジャーデビューを果たし、口コミという理想的な形でファンを増やし「進行形」を実感できる毎日を送っているのだから。
模倣をすることは、上達の一番の近道だ。ザ・ピスキッズのたどってきた八年間を思い、ファンの言葉を思い出すと、一枚のチラシの威力やコピーの底力を感じずにはいられない。
十月二日、「愛がたりない。/DAYS」二曲入(シングル)でいよいよメジャーデビュー。彼らはこの秋学園祭などを含めライブで全国を回る予定だそうだ。
知名度はまだまだ発展途上なれど、好きで続けてきたバンドとしての完成度はかなりの物と見た。「愛・恋・夢・ガッツ・・・」元気になりたい人にはおススメの『歌謡バンド』、ザ・ピスキッズである。

●ジョニー/サイド・ボーカル ●ヨースケ/ギター ●ヒデキ/サックス ●ケンジ/サイド・ボーカル ●ケンタロー/リード・ボーカル ●キナミ/ベース ●ハセ/ドラムス
Debut Single 『愛がたりない/DAYS』 Album/11月21日発売予定 |