齢50を越えてなお音楽に対して無邪気でいられること。
いわゆる『お遊び』でくくることのできない真摯なスタンス。
初期衝動に突き動かされまっすぐに進む表現者を、まだ若い僕らに見せつけてくれる姿がある。
山本耀司・Yohji Yamamotoといえば、世界的なファッションデザイナーとして著名なのだが、
鈴木慶一(ムーンライダーズ)らとCDをリリースしている音楽家でもある。
そして今回は新作《HEM〜たかが永遠》のリリースに加え、ライヴツアーまで敢行するという。
なぜ音楽活動に没頭するのか?僅か20分足らずの『激』緊張インタビュー。
憂いと優しさを満面に湛えた、目の前のヨウジ・ヤマモトの『ヘム感覚』とは…


photograph/中西ゆきの text/森裕史

---福岡でのライヴは、初めてですよね。「ライヴでは、初めてです。」
---どうですか? 「え?何もまだ分からないです(笑)ライヴ自体もすごい久しぶりなんですよ。」
---えーそれではまず、アルバムタイトルの意図、というか、意味を教えてください。「洋服の裾とか、俺よく切りっぱなしの洋服作ったりするんだけど。元々は、なんて言ったらいいのかなぁ、アウトサイダー感覚というか、エッジ感覚というか。いつもなんかこう、ファッションのほうで先生とか言われるようになっちゃったから…こう言うとね『そうですか?』なんて言われちゃうんだけどねぇ。いつも流行と違うことやってきたし、ど真ん中に居座り続けた気はしてないのね、本人は。周りから見ると、ファッション界の真ん中に居るように見えるらしいけど…。」
---充分、見えますけど(笑)。「(笑)で、崖っ淵?端っこ、とかマイナー、とかそんな意味あいがあってね。本人は、けっこう(鈴木)慶一とも『淵感覚』ってのがあって、社会のど真ん中には居ないなと。」
---そういう意味では、ムーンライダーズと似ているような感じですね。「うん。やっぱりほんとのマスコミ?ほんとの流行?トレンド?の中に絶対居なかったし、掻き回す役目だったし。」
---やはり異端、ですか? 「まぁ洋服のほうでは最初から異端って言われ続けたし、今でもそういう扱いされてる部分はありますけど…パリコレまでやってると、そうじゃないとも言えるし。でまた、居心地いいんでしょうね、センターに居るよりは。こうちょっと、ハスに構えて…(笑)」
---斜に構えて、なんですね。(笑) 「今回ライヴやるために、まぁリハーサルなんかして感じたことは、決して正当に評価されないだろうっていうね、ものすごいハンディキャップしょってるな、というのをやればやるほど感じるわけ。」
---それは、デザイナーとしての自分の存在があるから、と。「そうそう。だから俺にそれがなければ、ただの普通のおじさんが頑張ってるんだな、というシンプルな受け止められ方をされるんだろうけど…敢えて、ハンディキャップを、ね。」
---布に向かうときと、音に向かうときには違う感覚なんですか?「子供みたいな心境。音に向かう時は。布に向かうときはねぇ、百千練磨のベテランって目つきだから。」

---今の言葉と、歌詞を聴いて思ったんですが、昔の漫画家に永島慎二という人がいまして…。「ああ、ええ」 ---『芸術より生活のほうが大事だと気付くのに15年もかかった』っていう意味深い言葉がありまして。表現者はみんなそういうジレンマを持ってると思うんですが。「今の言葉を裏返せば、仕事なんてのは暇つぶしだからね。人生のね。たまたま俺は洋服やってるんであってね。」
---じゃ、今の自分にとっては音楽がいちばんですか?「子供のようにドキドキしながら、なんて言うのかな、不安だけど楽しいし発見の連続かな。だけど服に向かうときはね、最初にまず欠伸してから『ハァ、これか』って(笑)。」
---(笑)まぁ…仕事に飽きたとか、そういうのではないんですよね。「うん、そういう問題じゃない。分かっちゃってるのかなぁ。やばいんだよね。(笑)」
---アルバムとしてはどこを向かせているのでしょう「HEMっていうタイトルとも近いんですけど、ここに居て、居ないような感じ?何事からか浮いちゃっている感じ。で、かっこよく言うと、昔のビートニクの頃の『帰る家なんかねぇよ』っていう。詞の一個一個をとると、わりと悲観的な言葉が多いんだけれど、それを敢えて悲観的に響かせないっていう。だから詞のほうで言うと、俺の好みだからしょうがないよね。明るい楽しい言葉ってのはちっとも響かないから。」
---確かに、歌詞とかタイトルからみるに暗い。というか諦めてるのかなぁ、とか思ったりするんですけど・・・特に『やっぱり死んじゃった』っていうタイトルにはドキリとしたんですけど。「ああ、あれは昔からあった曲でね。」
---イメージとしては、どんな感じで作っていったんですか?「俺、滅多に意識しないんだけど年令を意識する瞬間が増えはじめた頃だから…40代の後半かな。その頃にできた曲なんですけど。えーと、正直な歌なんだよね。」
---『やっぱり』っていうのは、やっぱりなんですか?「『やっぱり』っていうのはすごい大事で。俺死ぬぞ死ぬぞっていつも言ってるんだけどなかなか死なない奴いるじゃない(笑)。じゃなくて『やっぱりあいつ死んじゃった』みたいな、そういう距離を持ちたいなというか・・・。」
---自分が死ぬときもそうありたい、ってことですか?「いや、そうじゃなくてそこに偶然性がすごく関わってくる。すごい重要に。」

HEM (Handful Empty Mood) 〜たかが永遠
Yohji Yamamoto with Scum Riders
■ツツジと犬と黄色いジャンパー ■交差点の向こう ■お凸と少年 ■俺を探してくれるなら ■濡れた闇 ■少し残った身体の重さ ■知ってるかぎりの時間を殺して ■ウラニウム万歳 ■やっぱり死んじゃった ■君がいるから ■豚がすべて
AGCA-10004 \3059(税込)