WEB BEA VOICE Vol.237 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET
ラモーンズ前夜
頼むぜ、バイン!'98
1998.12.19(sun) at クロッシングホール
●Text/Saori Nakashima ●Photo/Tomofumi Yamada

 

その時ロゴスがしめやかに濡れていくのが分かった。泣きたいほどの疼きが『遠くの君へ』と向かって流れ、『嘘』という名の戯れになる。どんなに互いを求め合っても、ひとつになれない距離の遠さ。自虐的な愛撫が残した身体の重みと輪郭だけでは、とうてい埋めることの出来ない“何か”がそこには、ある。誰かが言う。“GRAPEVINEの世界が好きな連中はおそらく、男も女も過去にひどい恋愛を経験してんだよね”と。ある意味それは当たっている。そして、多くはその情景の投影を彼らの世界に見ているのだ…たぶん。

 「基本的に実体験でしか(歌詞は)書けないですからね」と田中君。だが、そのシニシズムとニヒリズムの真ん中に立って、俯瞰的に世界を眺める視線は一筋縄ではいかないようだ。
「妄想癖というか誇大妄想狂ちっくな所があるんです。どうにかしたいんですけどね、この性格(笑)」。
現実主義の妄想狂…?そういえば彼らの世界に漂う“何か”を“喪失感”では、と訊いてみたら
「う〜ん…何と言ったらいいのか、何かず〜っとここに“在る”もんがありますね、自分の中に。ちっちゃい頃から…ず〜っと」と。
それは名付けたくても名付けられない存在なのかな?
「うん…多分。ただ、心の解放は常に求めてるんですよ。ただ自分的に胃が痛いのは嫌なんで…多分、一生幸せにはなれない性格ですよ(笑)」。
でも、例えばある日それが解放されたらまた違った世界が広がったりする?
「ええ。こう…すごいポジティブな、めっちゃ早いのんばっかり演るかもしれませんね。ラモーンズみたいな3コードばっかの(笑)」。

 じわじわと、まるでセックスのオルガスムにも似た高揚感が会場を包んでいく。一体感というよりは“ハコ1個の空気感”、いいライヴというよりは“気持ちいい”ライヴ。そんな中で「揺るぐことなく開けた作品(西原)」「自信作(亀井)」「だから繰り返し聴きましょう(西川)」とメンバーが揃って太鼓判を捺す『スロウ/望みの彼方』を聴いてみると、また違った味わいがある。
この日、田中君は曲が終わる度に「Thank you」という言葉を客席に向かって言っていたが、それは何かを“伝える”のではなく結果として“伝わってる”という意識の所在、共有の不文律に対する感謝の表れだったのかもしれない。

 インタビュー後、読者に一言と頼んだら「皆さん、頑張って幸せになりましょう」という答え。…やっぱ幸せになりたいんじゃん(笑)!今年は色んな意味でGRAPEVINEから目が離せないのだ。


M-1 覚醒/ M-2 カーブ/M-3 いけすかない/M-4 君を待つ間/ M-5 through time/M-6 遠くの君へ/M-7 青い魚(カヴァー曲)/ M-8 BALLGAG/ M-9 嘘/ M-10 スロウ/ M-11 涙と身体/ M-12 望みの彼方/M-13 TIME IS ON YOUR BACK/ M-14 白日 /M-15 鳥/ M-16 1&MORE/ M-17 PACES
EN-1 手のひらの上 /EN-2 恋は泡