WEB BEA VOICE Vol.237 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET
彼らは、「音楽を楽しむための術を知ってたな、って思いました」
インタビュー・構成/森裕史

 三宅伸治の新作『615』は、ナッシュヴィルでレコーディングされた爽快な南部サウンド。音の粒子が手に掴めるようなあったかい空気がスピーカーからほとばしる、最高の仕上がりとなった。当然ながら海千山千のスワンプ野郎に「YES」と言わせるだけの積み重ねを手土産にしての渡米だったってことは想像に難くないけれど、なんせトニー・ジョー・ホワイトまで担ぎ出したのにはインド人もビックリである。昨今いろんなミュージシャンが憧れの土地に赴き恋い焦がれたアイドルとレコーディングする、なんていう話は特に珍しくもない。が、三宅伸治の場合そのアプローチはあまりに深く直球かつ純である。もちろん、憧れに溺れず、自作の日本語詞で歌いきり、オリジナル・スワンプロックとして完成させたのは見事であるからして、ここはひとつ三宅伸治の<ナッシュヴィル熱>に素直に耳を傾けたい。それにしても、話の端々からナッシュヴィルの様子が手に取るように浮かぶ、実に濃いインタビューとあいなった。

--やっぱり、日本と違います?
「うん。(日本に比べて)無駄なことは、必要としていないんですよ。それと、ミュージシャン一人一人がプロデューサーであるっていうこと。曲に対してみんな前向きな気持ちだっていうことですよね。彼らは、極端な話、音楽さえあればいいんですよ。音楽さえあれば、地位も名誉も金も要らない、っていうような」
--そんな中でも一番心に残ったことは?
「ウェイン・モスが書いたYou Can't Say It Allっていう曲を(アルバムの中で)演ってるんですけど、これを演ろうって言った時彼はすごい喜んでくれたんだけど『もともと<全てを言えないよ。もし何かを残すなら>っていう歌詞なんだけど、俺はほんとはそこを<愛>って歌いたかったんだ』って。そういうことを、<そんな事もあったんだよ>って冗談で言うんでなく真剣に話すんですよ。で、結局僕は日本語詞をつける時<愛>にしちゃったんですけど…そんなこととか、なんか真剣で。おれらがどうでもいいようなことを真剣に考えてて、おれらが真剣になっていることは、もしかしたらどうでもいいことかなって…なんかね、結局音楽さえあればいいんだちゅうような…。彼らは、音楽を楽しむための術を知ってたな、って思いました」
--じゃ、帰国した時、日本に対して違和感がすごく残ったんじゃないですか?
「バリバリありました。夏以降、ずっとあって…。でもね、最近、吹っ切れました。さっきも言いましたけど、どうでもいいようなことにこだわってるんじゃないかって思えてきて…」
--なるほど。ということは今後の動きがすごく気になりますね。
「今は、自分のバンド…TRAMPでライヴをいっぱい演っていきたいなっていう。(地方を)細かく回りたいですね」
--でも、日本で演るライヴって当然ナッシュヴィルで録音した時とメンバーから何から違う訳じゃないですか。その辺のバランスというか…
「それはねぇ、割り切って演れました。先日のツアーで実験済みです(笑)やっぱ再現っていうのは難しいし、それを試みることも違うなって。(こっちはこっちで)メンバー各自のニュアンスで演ってもらったほうが良かったりするし。それはそれでオッケイです。バッチリでした」

三宅伸治&NASHVILLE CATS
New Album 『615』
COCP-30084 \3,059(tax in)
NOW ON SALE

■単身ナッシュヴィルに乗り込み、憧れのシンデレラ・スタジオで録音。「エリアコード615」ゆかりのメンバー、そして<ミスター・スワンプ>トニー・ジョー・ホワイトなどが参加しての音楽魂溢れる名盤。アナログ盤も発売中。