文/熊谷美広 TEXT by Yoshihiro Kumagai
写真/山田トモフミ   PHOTO by Tomofumi Yamada

ナンバーガール---このちょっと変わったバンド名を持った福岡出身のバンドが、今大きな注目を集めている。
圧倒的な疾走感のあるサウンド、たたみかけるようなビート、散文詩のように飛びまくった歌詞、そしてそれをやっているのが、浪人生のようなメガネをかけた兄ちゃん……。
まさにこれまでの日本のロック・シーンにはいなかったタイプの、衝撃的なグループである。
そんな彼らのメジャー・デビュー・アルバム『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』がリリースされた。
そこで全曲の作詞・作曲とヴォーカルを担当している向井秀徳に、彼の考えていることを話してもらった。

  --ナンバーガールって、向井さんがやりたい音があって、それでメンバーを集めたのか、それとも今のメンバーが集まって、結果的にあの音になったのか、どちらなのですか?
向井秀徳:どっちでもありますかね。最初は、ぼくがいろいろと曲を作ってまして、それでライヴしたいなと思って、人の紹介とかでメンバーを集めて、それでバンドになったんです。今でも全部の詩と曲をぼくが書いているんですけど、その中でメンバーの個性がにじみ出て来たなという感じですね。4年間やってきて、自然とナンバーガール的な世界観ができていったという感じですかね。
--いよいよメジャーからのデビュー・アルバムがリリースされたわけですけど、このアルバムに込めた思いは?
向井:インディーズでアルバムを出して、その次のアルバムという意識はすごくあるんですけど、メジャーのサウンド・プロダクションや制作システムというものにどうも馴染めなくて、自分たちらしいことをやろうということで考えた結果が、地元の福岡で、自分たちで録音するということだったんです。
--福岡で、たった4日間でレコーディングしたそうですが、その方がバンドとしての個性が出る、と。
向井:そうですね。スピリチュアルにものを、というか、変なこだわりはないんですけど、メジャー・サウンドとかに少なからず偏見みたいなものもありまして。作った感じのディストーションとか。実際東京でデモ・テープを録ったりもしたんですけど、しっくりこなくて、やっぱり自分達で録音した方がいいなということになって。やっぱり臨場感とか、その場でやっている雰囲気とかが好きですからね。
--例えばライヴの場合、東京でやるのと福岡でやるのと、どこか違ったりするのですか?
向井:ぼくたちはずっと福岡近郊でライヴをやってて、インディーズ盤を聴いた今のレコード会社の人が、東京でもライヴをやってよと言ってきて、それで初めて東京でライヴをやったのが去年の3月なんですね。その時はすごくテンパった感じだったんです。東京に対するいろいろなイメージがあって。都会の砂漠のような(笑)。聴くやつらも相当手強いんじゃないかと。でも演ってみたら、どこも同じなんですね。オレたちの演奏もいつものライヴと同じだったし。
--ナンバーガールって、これまでの日本のロック・グループの様々なタイプにはまりきらないスタイルを持っていると思うのですけど、それって意識的にそのあたりを狙っているのですか?
向井:意識しては絶対やっていないです。例えばパンクをやろうといってパンクのような格好をするとか、ヴィジュアル系とかいって、格好や音も似通っていることをやるとか、そういうスタイル先行のものは面白くないなと思うんです。でも意識してそういうスタイルにはまらないようにしようとも思っていないですね。自然にやるのがいちばんいいと。
--でも、ロックって、格好から入る場合も多いじゃないですか。
向井:革ジャンがカッコいいとかね。でもそれはごく入り口ですよね。ヘア・スタイルがカッコいいな、とか。でもだんだん成長していって、人に聴かせることになったときに、人からの借り物ばかりやってちゃできないな、とぼくは思うんです。
--向井さんのファッションについても、よく話題になると思うんですけど、メガネかけてるロッカーなんてそんなにいないし。そういうファッションって、何かポリシーがあってやっているのですか、それとも単なる無頓着なのでしょうか?
向井:基本的に無頓着ですね(笑)。何も考えていないから。で
もそれを面白がられているということが、自分としては、最初は不思議だったんです。ぼくが好きなアメリカやイギリスの、大学生に毛が生えたようなインディ・バンドとかは、みんなほんとうに着の身着のままでやってて、ジャケットに載っている写真なんかも、そのまま自分たちの街でライヴをやるからライヴ用の衣装や髪型をするという考えがまったくなかったんですね。だから非常に当然のことだと思っています。
--アルバムに収録されている10曲は、全部東京に出てきてから書いたということですけど、歌詞の部分で、東京に出てきてから変わった部分とかはありますか?
向井:歌詞自体が、生活とか、自分の日常の中からポロッと出てくるものばっかりなんで、生活環境とすごく密着しているんですね。だから当然、住むところが変われば、自ず
とそこで考えることも変わるだろうし。特に東京というイメージに自分の頭が支配されていて、見る風 景見る風景が違和感バリバリだったんですね。白昼夢の中 にいるような。それとバンドやるために東京に出てきたというテンパった感じがない交ぜになって、 そういう感じが出てい る10曲だと思いますね。
--歌詞を読んでみて、焦燥感や、や
りきれな い感覚というのを感じたのですが。
向井:これは悲しい気持ちですと
か、嬉しい気持ちですとか、あれを見て腹立ってますとか、そういった単純な感情の動き ではないですね。言葉 にはできな い感情とか、いろいろな風景を 見て何 ともいえない気持ちになる。その何ともいえない気持ち、その グニャグ ニャを吐き出したいという気持ちが歌になっています。 それで、思いついた言葉をそのまま出したいんですけ ど、ポップな感じにしたいというのはありますから、基本的にはおもしろいなと感じることをパッと出し てい ます。だから単なる思いつ きの、わけのわからんことをそのまま書いているということはないです。どんな形 でも、特に最近は、自分から出てきたものが全てになっているという自負がありますんで、どんな言葉であれ、 自分のものであるという開き直りはあります。
--ナンバーガールって、
そのスタイルや言動などが、“確信犯”なのか“天然”なのかというのが、今でもよくわからないんでっす。
向井:“確信犯”というのはあざとい感じで、気持ち悪いんですね。これ
はわかるヤツにはわかるだろう、というのはいやですね。自分たちの自然な形でやるのがいちばんいいだろう、という開き直りでやってます(笑)。
--ライヴなどで、ファンには何を伝えたいと考えているのですか?

向井:伝えたいというか、音楽をやってる気持ち良さは何かと考えたら、自分から出てきたものをただ出すだけだったら、山の上なんかでひとりでやっていてもいいんですけど、その自分から出したものを他者にブチあてる、という快感があるんですね。その気持ち良さを求めてやっているというところはあります。自分のグシャグシャから吐き出されたものを、半ば強引にブチあてると(笑)。でもそのブチあてる人がいて、初めてぼくたちの音楽がひとつの形になると思っています。
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