●インタビュー・構成/森 裕史

 イノトモ・・・本名いのうえともこ、福岡出身のシンガー・ソングライター。高校卒業後、音響関係の専門学校に進み、友人のライヴでなんとなく歌ってみたら、これがなかなかで、歌手になってしまった・・・というだけならどこにでもありそな話であるが、その曲がフェアグラウンド・アトラクションの『ハレルヤ』というんだから出来過ぎ。ずっと好きで、現在でもときたまライヴで歌っていると語ってくれましたが、これアカペラの超名曲なんですもんね。その後なぜか知人の紹介でジャズ・クラブのレギュラー・シンガーに。ジャズ・クラブで、いろんなスタンダード・ナンバーを教えられたりを経て、宅録でデモ・テープを吹き込みライヴ活動を始めた、というのが彼女のサクセス・ストーリー(?)『愛のコロッケ』『かわいたほね』といったユニークな語感を持つタイトルはじめ、イノトモの作品は、素朴なことば遣いの中に繊細なニュアンスを巧みに織り込んで、聴くものを、すすーっと惹き付ける。ささやくような、線の細い歌声ながら芯はしっかり保っている器用さも説得力を増加させているんだろうが、本人はいたって明るく、天真爛漫といっていいほど。ワインをくいくい飲みながら、しょうもないこと(と、本人は微塵も思っていないのだろうけど)でケラケラ笑う姿とのギャップ。そこが、いいんですがね。 イノトモの、素晴らしい楽曲と歌声と、これまたすんばらしいキャラを愛し、コラボレイトしてくれたミュージシャンがまたいい。鈴木惣一朗(ワールド・スタンダード)、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)、塚本功(ネタンダーズ)、benzo、などなど。共通するのは、懐が深く、決して押しつけない、というまさにイノトモそのものであるからして、出来た作品が悪いわけがない!・・・なんて、こっちがちょっと押しつけがましいか。 そう、押しつけがない。が、心にしんと残る、よい音楽。現代音楽の第一人者エリック・サティは、理想の音楽を「家具の音楽」と名付けたらしいが、イノトモはまさに空気のような音楽、されど空気を変える力を持った音楽を生み出している希有な才女である。だから、悪いわけがないんだよなぁ・・・。
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