文/森裕史 TEXT by Yu-shi Mori
写真/山田トモフミ   PHOTO by Tomofumi Yamada

 デビュー盤『若者たち』から6年。その間、『東京』『愛と笑いの夜』『サニーデイ・サービス』『24時』『MUGEN』併せて6枚のアルバムと幾枚かのシングルを発表してきたサニーデイ・サービス。フォーマット化されがちな日本のメジャー・フィールドにおいて突出した独特の存在感を放つ彼らの楽曲は、そのすべてが名曲・名盤であり俺の愛聴盤となっている。いまさら言うまでもないが俺なんぞに限らず、全国に多くのファンがいる、きわめてメジャーなバンドだ。メジャーなんだが、どうだろう、いまひとつ実像というか世間に浸透しきれていないような気がして「もったいないなぁ」と気を揉むのは俺だけか?
そういうわけで、この記事(インタビュウ)は、未だサニーデイ・サービスをよく認知していないサイレント・マジョリティ(?)にこそ読んでいただきたい。もっと多く
の人にサニーデイ・サービスを知って欲しい、聴いて欲しい、できれば好きになって欲しいと思っているのだ。
そういう俺にサニーデイ・サービスとのインタビュウがセッティングされることになった。アルバム・リリースを前にシングル『夜のメロディー/恋は桃色』が発売されるというのでサンプル盤が届き、早速聴きつつインタビュウの項目をまとめ・・・たいのであるが情けないことに実際、彼らに訊くことなど、特に無い。それは、同じく俺の尊敬する早川義夫に取材したとき「インタビュウにお答えすることは特別ありません。貴方が、僕の音楽を聴いて、感じたことを素直に書いてくれればいいのです。僕は喋ることでなく音楽をやっているのですから」と云われ、あまりの説得力に頭上からつま先まで電光が走った経験があるので「今回の狙いは?」「今回の特徴は?」などという愚問は御法度。結果、雑談めいたものになってしまったのであるが、彼らの思うところ、独特の匂いが伝われば幸いである。
なにをいまさらという感じで恐縮だが、彼らがデビューした頃「サニーデイ・サービスってどんなバンド?」と訊かれ「うーん・・・やっぱ ”現代版はっぴいえんど”かなぁ」と気楽に答えたものだがそれは世の論調とずばり一緒であった。俺も単純である。が、すぐに表層的な<はっぴいえんど・フォロワー>的評価は消滅した。もちろん、彼らの根っこには ”はっぴいえんど”からのインスピレイションてのは強く残っているだろうけれど、もっと大きなもの、次のものに対する興味や信念がバンドをいやがおうにも成長させ世を納得させていったのであろう。実際、彼らの素敵な音楽の原点は「音楽に対する姿勢」ありきなものであることに疑いはない、と思う。

 「音楽が人の心を動かす、っていうのは、例えばそれがダンス・ミュージックだったからとか、例えばそれが弾き語りだったから、とか、上手かったからとか下手だったからとかそういものでもなくて。でも、そこが一番重要で、だから、そういうことがあるっていうのは明らかに事実であって・・・だから人の心が動く音楽というか・・・。そこの部分で何かを表現するっていうのが、目標かな。ライヴでもそうなんだけど『だからこうなんですよ、分かってくれ』とか『こうなんだよ、褒めてくれ』とかいうのは全然なくて」
---前回の電気ホールのライヴというのがすごく印象的で。初めてのホール・ライヴっていうのもあったのでしょうが、なんかステージと客席が一体化、とかいうんではなくて不思議な、でっかいハメコミ画面を見ている感じだったんですよね
「それは音楽に対する真摯な部分とか、ひたむきな部分とか、そういうのが、そういう透明なボックスに入っているような・・・。今回も、そういう部分もあるだろうけど、それだけでもないというか」
---今回は、そういうのからも抜けきった、と
「今回は、前とは違うライヴですよ」
---それは、心持ちや姿勢がまた違ってきてるってことですよね
「そうそうそう・・・なんだろうね、だから、新しい作品を早く聴いて欲しいなと思います」
---商業音楽ならばいくらでも虚構を歌い、時流に合わせた、それなりの流儀というか姿勢があると思うんですが、ロックは違いますよね。サニーデイは、当然そういう意味でロックだと思うのですが、曽我部くんの詞はすごく個人的なところから生み出されているにも関わらず、詞や歌いまわしから噴出する生々しさってのがないですよね。感情の波は当然あると思うんですが、楽曲に出てないですよね。それは、客観的にコントロールしているというか、一旦、咀嚼して作品化しているのかなぁ、と
「いや、性格、性格。そういう性格(笑)」
---例えばニール・ヤングとかだともう感情ブチ切れな感じじゃないですか。僕は、英語が苦手だから歌詞の内容まで把握しているわけじゃないですけど・・・
「ニール・ヤングは自分の感情の起伏の激しさをショウに持っていける。それはあの人の性格。僕は、僕も感情の起伏はみんなと一緒で、あるけど、でもいちように穏やかな、割と穏やかなものが多い。そういう性格。内心ムカムカしてるけどあんまし怒んない人っているでしょ?内心ムカムカしてたらすごく怒る人もいるでしょ?それも性格。音楽もそれが無くなったら、もう全然・・・。俺はね。ただ、ほら、スキルの部分とか、プレイヤビリティとかの部分で楽しめる人もいるだろうけど、僕は駄目。うん」
---なるほど。では、全く愚問なんですが、サニーデイを敢えて、歴史上のバンドに例えるとすると?
「ああ・・・何だろうね」
---何でしょう?
「・・・完全にグレイトフル・デッドじゃないですか?ただ、まぁデッドって、アメリカっていう意味だから、あれはアメリカにしか存在しえないけど・・・そういう点でね。(サニーデイが)日本でそういう(アメリカにおけるデッドみたいな)感じでやってるっていうのもあるし・・・。微妙。だからみんな、なんで俺たちがいい感じでこういう風にやってきてるのか分かんないと思う。自分らもあんま分かんないし。その、完全に商業主に行ったわけでもないし商業主義と完全に離れてやってきたわけでもないし、ね?つかず離れずで。で、端から見ると全然セル・アウトしてない感じだと思うんですよ」
---なるほど。そういう意味で、日本のグレイトフル・デッドであると。で、このインタビュウではですね、サニーデイ・サービスの存在というのはオルタナティヴ・シーン以降の価値観というものなかでは、すごくアリだと思うんですが、どうも一般的ではないような気がしてまして。もっと多くの人に分かって欲しいなと思ってるんですけどね
「いや、分かってんじゃない?『サニーデイ・サービスって、なんか居るねぇ』という。”なんか居るねぇ”の中ですべて、分かってるんだと思う。(サニーデイを)聴いてない人でも。そういうことじゃないかな。だからその、独特の存在感?希薄なのか、ガッチリなのか分かんない存在感というか。・・・僕らは、最近いつも言ってるんだけど、もうサイケ。存在が」
---サイケ?
「中一のときからサイケが大好きだったもん」
---サイケが好きでサイケになった?
「ええ。音楽がサイケになったくらいじゃなく、存在がサイケ!」
---『存在がサイケ』そりゃいいですね!いい言葉だ
「よく、一見サイケな人らっていっぱいいるけど、やっぱサイケ・ステージが低いと思うけど・・・」
---サイケ・ステージ(笑)
「俺なんか、もう存在がサイケになってるもんね、と思う。幻覚、幻覚」
---サニーデイは幻覚なんだ
「幻覚なのか本当なのか?でも幻覚見てる時って、それが本当以上のリアリティを持ってる場合もあって、だから、本当に存在するのかしないのか分かんない。どこが自分たちの実地で、そこで本当にやってるのか分かんない。誰とつるんでるのかもいまいち分かんない。でも別に謎に包んでなくて全部出してるでしょ。だから・・・まぁ(サニーデイは)特別な感じはしますね」
---や、スペシャルですよ。ほんとに
「でもそれは、俺が頑張ってやってきたわけじゃなくて、メンバー三人がいてスタッフがいて、いろんな偶然の重なり合いでそうなっちゃった。全部が重なり合って生きてきた。で、今、振り返ってみて、この6年とか振り返ってみて・・・ 『悪いことやっても知名の一面になればいい』とか『汚い手使っても売れたい』とかそういうこと考えたこと一回もなかったもん。やっぱ、すごいいい音楽をいい状態でいっぱいの人に聴かせたいというのだけでやってきたから、それはすごい良かったなと。いいバイブレーションの中で。したらさぁ・・・」
---サイケになった(笑)
「それが一番重要。変に裏をかいて騙してやろうとか翻してやろうとかそういうこともなくて、自分を振り返っても、良いことだなぁと思う。音楽に関してはね!人間的には自分は全然良いとは思わないけど、自分たちが無理して作っていきたいとは思わない。それが、いい状態で続けていける秘訣だと思う。売れてるとか売れてないとかあんま関係ないもん。いいことやったらずっと売れるし、悪いことやったらどっかで売れなくなる。それは、誰でも分かってることで・・・」
---サイケとして、分かってる?
「・・・はい」
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