文/なかしまさおり TEXT by Sayuri Nakashima
写真/山田トモフミ   PHOTO by Tomofumi Yamada



 6月7日に全国ツアー《下剋上エクスタシー》が終わったばかりだというのに、何やら林檎の周りが騒がしい。
「シークレット・ライヴ演るんだって」「えっ、どこで?」「ロレッタセコハンとDRUM LOGOSで」「マジ〜っ!?」
----というわけで梅雨真っただ中の6月某日、謎の覆面バンド“発育ステータス”と地元バンド“ロレッタセコハン”による噂のシークレット・ライヴが開催された。まず先陣をきったのはドラム、ベース、サックスというミニマルな編成のロレッタセコハン。地元ではかなり知られた顔で、そのクールなパンク・ジャズ(?)スタイルで東京、長野、沖縄などへも頻繁に遠征を行なう実力派。そういえば何かの記事で読んだのだが、過去にライター・北沢夏音氏が彼らを指して「マノ・ネグラか?!」と絶賛したという話は、かなり有名だが、う〜ん、なるほど。ピストルズもクラッシュもスペシャルズも、はたまたクラシカルもアナーキーもすべてが同次元で展開される彼らのスタイルは、確かに言い得て妙の例えなのかも。饒舌なメロディ、変則的なリズム。まるでジャム・セッションのような緊張感と高揚感が次第に会場を束ねていく。あらゆる虚飾を削ぎ落とし、その本質だけに迫ったタイトな演奏は意外にロゴスで見ても雰囲気出るなぁ…と、これまでJAJAとかの小さいライヴ・ハウスでしか彼らを見たことの無かった筆者は、いたく感動。しかも、ベース・豊嶋義行氏のボソボソッとしたMC--「緊張して失禁するといけないので成人用のおむつをしてきました」など--は逆に、そういういメンバー個々の演奏力の高さとエライ落差があって、やけに笑えた(ん、逆に引いていた客もいたか、な?…笑)。
ちなみにご存知とは思うが、ドラムの時津梨乃嬢と椎名林檎嬢はMarvelous Marble時代の同志。これまでもアルバムへの参加などさまざまな形で競演はしているものの、ロレッタセコハンとしては昨年11月、東京・club asiaで行なわれた《虚栄ブランコ》なるシークレット・ライヴ(vs 天才プレパラート、NUMBER GIRL)以来、2度目の対バン(かな?)。それだけにもう少し長くロレッタの演奏を堪能したかったような気もするが、ここはとりあえず腹8分目ということで、次なる発育ステータスへ。


さて、謎の…とは言っても、その正体は誰もが知ってる新人(?)バンド。メンバーはVo.&B.椎名林檎、B.村田純子(from 八王子ガリバー)、Dr.吉村由加(from DMBQ)、G.田渕ひさ子(from NUMBER GIRL)、B.鳥井泰伸(from GAJI,ex PANIC SMILE)という強者揃いで、福岡、広島、関西、東京を《御起立ジャポン》と題したツアーで巡業中。しかも、この日会場内で配られた宣言文には次のようなくだり--「我々は、今ここに我々の音楽や表現・芸術・感性・感情・面持ちや雰囲気といったものを総動員して御起立します。この我々の企てが暴力無き武装蜂起であり、我々の我が闘争であり、御起立なのです」--があり、このバンド--田淵ひさ子のオルタナ感あふれるギター・リフと吉村由加のぶっといドラム。加えて、他に例をみない村田純子、鳥井泰伸、椎名林檎という重層かつ強靱なトリプル・ベース--が単なるお遊びバンドではないという決意も伺える。
ただし、バンド名が“発育”なだけに、演奏曲のタイトルや方法論には遊びがいっぱい。例えばオープニングSEはシューベルトの『野ばら』で始まり、続いて『発芽』→『悪い苗 善ひ萌』→『害虫駆除』といった具合にだんだんと成長過程が示されるというユニークな構成。歌詞も♪ソラドシドレソ、ソラドシドレソ…とひたすら音階を繰り返すだけのサビとか、押し倒してヤッちゃう…みたいなドキッとする言い回しで、インパクト大。曲自体はいずれも3分前後の、武器で言えばいわば手榴弾のような即爆発型のモノであったが、それだけに椎名林檎ワンマンの時とは全く違った楽しみがあった。
そう言えば今日のステージを見ていて、ふと思い出したのがももちパレスで開催された数年前の某フェスティヴァルだ。田渕ひさ子、時津梨乃、椎名林檎という、最近ではともさかりえの『少女ロボット』でも競演中のこの3人が揃って出場していた伝説の(?)ステージ。う〜ん、なんだか感慨深くて、しみじみしちゃった。しかしながら、一時期、本誌も含めた各音楽誌にて「椎名林檎はアルバム3枚で終わる」発言をしていた林檎嬢。この発育の“御起立”の先にあるもの、あるいは後ろに控える我々の“御起立”いかんによっては、それが現実となる日も来るのだろうか?
いずれにしても今後の“発育過程”が非常に気になるライヴであった。

【ロレッタセコハン】
M1.新曲1/M2.デスパレード/M3.新曲2/M4.ムーン/M5.タンゴ/M6.新曲3/M7.どんがら/M8.2拍3連/M9.新曲4/M10.グラインド/M11.7拍子/M12.メンズラスト
【発育ステータス】M1.発芽/M2.悪い苗 善ひ萌/M3.害虫駆除/M4.生え抜き/M5.膨んできちゃった/M6.はいはい/M7.たかい たかい/M8.咲かせてみて/M9.今夜だふ/M10.雌花 故 雄花/M11.光合成

Rie Tomosaka New Maxi Single
ともさかりえ『少女ロボット』

■全作詞・作曲・編曲=シーナ・リンゴ ■演奏者= いけない子達/ともさかりえ:コエ、ブレス 椎名林檎:ピアノ、ハーモニー 岩井英吉:ベース 田渕ひさ子(ナンバーガール):ギター 時津梨乃:ドラム
■ジャケット写真=椎名林檎
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