WEB BEA VOICE Vol.258 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET
2000.9.25(mon) at DRUM Be-1
●text/Satomi Yamasaki ●photographs/Tomofumi Yamada
 中村敦、3ヵ月ぶりの福岡である。今回はBe-1のほか3ヶ所を廻る彼に、ライヴ前の楽屋で今思っていることを話して貰った。まずは、そちらをどうぞ。
「もうパッケージは、要らない。より深く自分の想いを出して、それが僕の歌として成立って、歌として楽しい歌であって、歌として受け継げられる、っていうものが出来たら、別にもう何でもいい、とは思う。それをやっていくと、多分今までやってきたことよりもっともっと凝縮したダサい、ドンクサイことになっていくと、思うんだ。決してカッコイイとは思ってないんだよ、全部が全部。自分が好きなものをさ、曝け出すっていうのは、非常に恥ずかしいことじゃない。この人が好きでこの服が好きで、明太子もこうやって醤油かけて食うのが好きなんだ、って言うことは。それでも、恥ずかしいけど好きなんだよ!って俺は言っちゃうし。これからはそれが、今までよりもっともっと出ていくんだと思うよ」
リュック・ベッソンが『ジャンヌ・ダルク』公開を前にしたインタビューでこんなことを語っていた―「その場その瞬間のエンタテインメントだけを求めた映画なんてすぐに忘れてしまう。結局人間の心にずっと残るのは、キャラクターやストーリー、つまり人間なんだ」―。音楽、とりわけロックの歴史もそうだった。人間の歓喜や欲望、絶望と希望の歴史。魂の叫びや呻きや呟きが聴こえるほどのリアリティとスピリッツが、ストーリー=歌を奏でてきた。スタイルや時代性を超越した歌を鳴らしてきた。ジョンもディランもカートも。だからこそ、色褪せることなく輝いてきたし永遠に輝き続けるのだろう。
で、中村敦である。いつか好きだと言っていた、ハイスタの『ENDRESS TRIP』さながらの“歌うたい”の旅を続ける彼。彼の歌には、同じ輝きがある。この夜、彼のジュークボックスが選び出すまま、心のままに歌われる無防備な歌を聴きながら、そう思った。生きていることの意味、活かされていることの尊さに真っ向から対峙し、彼は唄っていた。“Knockin' on heaven's door…あえてこう言うよ、everyday!”と、今この瞬間の“生”を湛えてディランの歌を。“僕らしく、あなたらしく、笑っていこうぜ”と、ありったけの愛情で『STAY FREE』を。これが、中村敦の歌なのだ。微塵の嘘も虚勢も装飾も無く、真っ裸の魂をぶら下げてでっかい声で笑いながら世界のド真ん中を歩いている。その姿が彼の歌そのものだということを、きっと、この場所に居た誰もが感じたのではないだろうか。ダサくたって、ドン臭くたって、いいさ。
M1.一期一会 M2.Hold me  M3.願い M4.風来  M5.Knockin' on heaven's door M6.ONE M7.STAY FREE