WEB BEA VOICE Vol.264 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET

AJICOと、風に吹かれて。
"2001年AJICOの旅"
2001.3.4(SUN) at Zepp Fukuoka
TEXT by KAZUSHI NAGAHATA PHOTO by TOMOFUMI YAMADA
 
なかなか荒れくれた日だった。風は強く、寒く、降ったり止んだりの雨は、時々雪に変わったりもした。
 最初に出てきたのは、UA。「ハロー」と会場に声をかける。つづいてベンジー。少し遅れてTOKIE、椎野が位置につく。ステージはいたってシンプルで、余計なものはほとんど見当たらない。さあ、1曲目がはじまる。ベンジーのギターが静かに刻まれ、水面に広がる波紋のように、UAの声が会場へと漂ってゆく。舫いは解かれ、AJICOは音楽の海へ出る。心地よい緊張と静かな興奮。早くもじわっと手に汗、鳥肌である。
 「ニイハオ」とあいさつしたベンジーが、ギターをかき鳴らし、リズムが力強くうねり出す。『美しいこと』!。僕はこの曲の“どんなに弱くても美しくなれる”というフレーズがとても好きだ。こんな言葉を、こんなビートとメロディにのせて歌ってくれる人たちがいるというだけで、ああ、なんだか、非常に心が動いてしまう。今夜ここにいられてよかったと思う。ロックは、バンドは、音楽は、魔法だ。目が、少し潤む。
 アコースティックとロックンロール。穏やかな波、激しいうねりに揺られながら、宇宙を彷徨うヨット=AJICOの音楽が次々と生まれてゆく。美しい織物を紡ぐように、またそれを引き裂くように奏でられるベンジーのギター。あのクセのあるボーカルは、ライヴで聞くと思った以上に力強い。椎野は本当にうれしそうに表情豊かなドラムを叩き、TOKIEはバンドの航海をぐいぐいとグルーヴする。ソロで見たUAはまるで巫女さんみたいだと思ったけれど、AJICOのUAは、どこか遠い国のお祭りで歌い踊る少女のような、そんな印象。大きな力、つまりAJICOというバンド・サウンドに身を委ねることで、こどものような無邪気さを得ている感じ。『深緑』からの曲だけでなく、UAのソロ名義の曲やBJCの曲も新しく演奏される。4人の個性がオーガニックに結びついた、あたたかく、みずみずしい音楽。シンと聞き入ったり、声をあげてジャンプしたりして、満員の場内が応える。穏やかな叙情と熱のある感情が入り交じったそのステージは、見たことのない景色を旅してゆく、不思議なおとぎ話のようだった。
 セッションから創り出されるAJICOの音楽がそうであるように、僕たちはいつも、何か純粋なもの、本当に美しいことを求めて彷徨っている。その一方で、白の裏は黒で、光がさせば影ができることも知っている。この現実の世界で、宝物を見つけるのは難しい。けれど、UAと、ベンジーと、TOKIEと、椎野と、そこに集まった人たちの波動が重なって生まれた、その夜のAJICOの音楽は、やっぱり、とても美しいものだったと思う。またいつか、AJICOと旅に出てみたい。
M1.青い鳥はいつも不満気/M2.美しいこと/M3.金の泥 M4.すてきなあたしの夢 M5.GARAGE DRIVE/M6.Lake /M7.午後 M8.悲しみジョニー/M9.深緑 M10.ペピン/M11.歪んだ太陽/M12.フリーダム M13.波動
EN1.庭/EN2.カゲロウソング