WEB BEA VOICE Vol.265 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET
地元の音楽家やキーパーソンを紹介するコラム
 
ロック・バンドにハーモニーは御法度?
Text by 森 裕史 

 「たまにカラオケ行くと、他人の歌を勝手にハモる。それも巧けりゃまだいいけれどニワトリ並に高音域を絞り出しながら、怪しい音程でせっかくの名曲を台無しにしてくれる。しまいには、原曲ではハモるとこなどありもしないのに、いつの間にかハモリパートが創作されてしまう。あんたの創作カラオケに付き合わされる身にもなって欲しい」と、責められるのは、誰あろう俺。それだけハーモニーが好きだと言いたいだけです。
さて、ハーモニーといえば、今回ご紹介するフィールド。この紙面でもモーサム・トーンベンダーなどと並び頻繁に登場しているお薦めのバンドだ。去る5月5日、アンカーとして夜明け前にギターを頭上高くかざしながら熱演してくれたイベント「IFF meeting JUNCTION」を回想しつつ、フィールドを語ろう。
メンバー構成は、ヴォーカル&ギターの林田、ギター&コーラス吉井、ベース&コーラス山田、ドラム&コーラス水津、以上4名。ベースとドラムのいわゆるリズム隊を女性が受け持っている。見た目ちょっと不安定なこの構成こそ、バンドに対する林田のこだわりが強く反映された結果だ。
演奏は雨後の大河の如くラウドで激しく、メロディーは初春の雪解け水に似て儚く耽美。純文学的で空回りも辞さない林田の力強い詞は、まるで夕立を呼ぶじっとりとした夏の午後を想わせ、スピーカーに張り付く厚いコーラスはまさしく全身くまなく降り注ぐ大粒の豪雨・・・以上、ありったけのボキャブラリーを駆使してフィールドというものを表現してみたが、いかがなものか?いーや、大袈裟と言うなかれ。一度ライヴを観てもらえれば、そしてあなたが洋楽も邦楽も古いも新しいも分け隔てなく聴けるポップ音楽好きならばこの微妙なニュアンスを理解していただけるはずだ。フィールドは、ライヴとCDの印象がかなり異なる(落差ではないので、念のため)。ライヴは押しが強く、情念渦巻く林田のヴォーカルを中心に混沌となる。歪んだギターとベースに力任せの大音量ドラム、そして全員コーラスというサウンドは、世の潮流に抗う中域たっぷりな音の壁。これまさにウォール・オブ・サウンド。モノラルのアナログ盤シングルを聴いてるみたいな感じか。総じて言うなら、全体的にトゥー・マッチ。つまり、濃いんだな。俺も、そんなにたくさんの音楽家を見てきたわけではないからここで断言するのは気が引けるが、それでも彼らの楽曲や詞は「売れる/売れない」という二元論に収めることを拒絶する気高さを持っている、ような気がする。もっとも、メンバーとしては売れてくれないと困るんだろうが・・・これで良いのである。わかりやすい、つまり極めてポップな楽曲を演っている割には、孤高のジャズやクラシックあるいはアンダーグラウンドに根付く非常にパーソナル性の強いイメージを漂わせていて、その得も言われぬ、言葉にし難い「臭い」が魅力なのであるから。加えて、そこまで詮索するのは野暮かもしれんが、彼らのポップ・フィーリングを表層的にとらえることは本質を見逃すので要注意だ。さすが、ヘッドエイク・サウンズ九州支部、一筋縄では行かないのである。
渾身のアルバム『烽火を上げて』は好評発売中。うまいこと売れて、全曲カラオケに入れればいい、と考える今日この頃だが、これは本気。フィールドの三部のコーラスをカラオケで歌えるその日まで、フィールドを支援しつつ歌を練習しよう、と思っている。


FIELD 烽火を上げて スレッジ・レコーズ 販売元/
ポニーキャニオン 発売中