WEB BEA VOICE Vol.267 TOP  BACK NUMBER  ARTIST INDEX  BEA-NET

いい感じの、井上陽水さんでした。
井上陽水コンサート
'01 THE 21st. ALBUM ANNIVERSARY
2001.6.8(fri) at 福岡サンパレス
TEXT by KAZUSHI NAGAHATA PHOTO by TOMOFUMI YAMADA

 2デイズ公演の2日目。会場は満員である。お客さんの主流はやっぱりアダルトな方々だけれど、若い人もちょいちょい見える。デュークエリントンのBGMが止むと、男女1人ずつのギター2人、ドラム、ベース、キーボードの5人が登場。少し間をおいて、井上陽水がゆったりと、優雅な物腰でステージに歩いて来る。紫のシャツに白いパンツ。
 オープニングの『青い闇の警告』からして、思ってた以上にロックである。つづく最新のカヴァー・アルバムからのナンバー『コーヒー・ルンバ』は、オトナである。つまり、オトナのロックである。「みなさんこんばんは。今夜はコドモっぽくないショーをやるつもりなので、最後までごゆっくり」陽水もそう言った。
 『帰れない二人』では、イントロで拍手が湧く。お客さんたちはみんな坐ったままで聞いているのだけれど、その分、視線の熱量がすごい。陽水に向けられるまなざしの力が、会場中に漂っている。1曲を聞き終えた後の拍手も、強い。聞き応えある歌のクオリティに負けじと応える、熱いリアクションだ。それを受け止めつつも、陽水はあくまで飄々としている。
 MCでは最新アルバムのボツ曲の話しなどして、『黒田節』や『炭坑節』を口ずさんでみたりする。が、聞かせるところはシッカリと聞かせてくれる。『螢の光』や『とまどうペリカン』などでのシルキーな声の魅力しかり、『自然に飾られて』、『花の首飾り』での白昼夢のごとき陽水ワールドしかり、さすがであります。圧巻『My House』、『氷の世界』、『ビルの最上階』のロックなメドレー。もうずいぶん前に書かれたはずの言葉が新しいビートを得て、時代を超えて再生し、現代を撃つ。やはり、詩人としての力量もすごいものであった。
 いま、井上陽水は“かなり自由でいい感じ”ではなかろうか。『帰れない二人』の共作者でもある忌野清志郎も言っていたけれど、「大人になるのは、いいもんだ」的な、そんなマインド。そこには自分流のやり方で重ねて来た、長年のキャリアに対する冷静な自信があり、それが自由で楽しいクリエイティヴを後押ししている。そんな余裕と解放感が、約30年のキャリアにして初の全曲カヴァー・アルバムを生んだのだろうし、この日のコンサートにもつながっていたように思う。
 「改革に伴う痛み」などをしたり顔で語ることも必要だろうけど、話していても歌っているような、井上陽水みたいな喋り方で語れる「楽しいこと」も、いいオトナは忘れてはいけない。誰かがツラそうな顔をすれば、まわりまでツラくなる。『旅人よ』とか『星のフラメンコ』などをうれしそうに歌う陽水さんの姿を見ながら、つくづくそう思った次第です。
M1.青い闇の警告/M2.コーヒー・ルンバ M3.帰れない二人/M4.旅人よ/M5.ライバル M6.ジェラシー/M7.バレリーナ/M8.螢の光 M9.とまどうペリカン/M10.手引きのようなもの M11.ミス キャスト/M12.自然に飾られて M13.花の首飾り/M14.We are 魚/M15.My House M16.氷の世界/M17.ビルの最上階/M18.海へ来なさい
EN1.少年時代/EN2.嵐を呼ぶ男/EN3.星のフラメンコ EN4.結詞