火のないところにKEMURIはたたず。
インタビュー・構成/なかしまさおり TEXT by Saori Nakashima
 
写真/久保憲司  PHOTO by Kenji Kubo


SPECIAL INTERVIEW

 前作『千嘉千涙』から約1年振り。バンドとしては通算4枚目となるスタジオ・アルバム『emotivation』を10月3日にリリースしたばかりのKEMURI。タイトルは人間の持つ喜怒哀楽という感情--emotion--と、音楽が好きで好きでしょうがないという動機--motivation--から成る造語との事だが、噛み砕いて言えば己を突き動かすもの、それそのもの全てのことに繋がると、ヴォーカル・イトウフミオは言う。これまでにない赤裸々な言葉でその心の内を綴った歌詞。あるいはバンドとしての新たな可能性を意外な角度から探ったサウンド。至る所にKEMURIとしての“感情のほとばしり”を感じずにはいられない、今回のアルバムについてイトウフミオに語ってもらった。


「カッコつけたりするのはもういいかなって。それよりはもっと自分達を削っていく感じの方が絶対にいいと僕は思う」
--今回のある場無には今までにないバンドとしての吹っ切れ感というか、ある種、突き抜けた感じというのを印象として持ったんですけど、もともとのスタート地点はどういうところから出発してるんですか?
「今回は特にバンドのメンバーでコンセプトを話し合ったりとか、そういうことは全然無くて。強いて言えば前回のツアーが長かったんで、とにかくもう、楽にやりたい、楽しくやりたいっていうのがあったぐらいで。きっかけとしては非常に漠然としたところからスタートしてるんですよ。(笑)で、もちろん僕個人としては今までやったことの無いことをやりたい、歌詞の面 でもいろんなアプローチをしたいちおうのは考えていたんですけど、後はもう人それぞれという感じで。」
--でも、その分、非常に意外性のあるアプローチと言うか、“今までのKEMURIには無かった感じ”の曲がいくつかあって、耳を惹きますよね。例えば『rockin'』なんかでは敢えて“ロック”という言葉が全面 に出されていたりもするし、『city life』では歌詞におけるクールな視線もさることながら、バンド初の2バス仕様っていうところもあったりなんかして(笑)。
「そうですね(笑)。やっぱり今までは敢えて“ロック”って言っちゃうのって、非常にこっ恥ずかしいっちゅうか、なんかイマイチ…みたいなのがあったわけですよ(笑)。きっと10年前だったら絶対に歌えてなかった歌詞だと思うんだけど、でも、それももう言っちゃった方がいいのかなと。フジロックに出てから、その辺(の意識)は崩れて来ましたね。フジロックって、凄くベタなネーミングなんだけど(内容は)凄くカッコイイというか、そういうのがやっぱ良いよなぁって。まぁ…『city life』に関しては、正直言ってちょっと考えましたけどね(笑)。というのも、僕はミナミがもっと8(ビート)でガンガン攻めて来るような曲を作ってくると思ってたんですよ。そしたら全然違うの作って来たから。この曲でいったい、何を歌えばいいのかなと。果 たしてアルバムに入れるべきかどうかというのはちょっと思いましたね。ただ、演ってるうちに何となく馴染んで来たし、最初に持った違和感みたいなモノはだんだん薄らいで行ったんで結果 的に入っているんですけど。でも、まだまだ分からないですよ(笑)。ライヴで演ってどうしても肌に合わなければ、この先演らないだろうしね。そういう意味では非常に面 白いですよね。」

--あと、もう一つ気になったのが先行シングルでもある『five o'clock at night』が11曲目で、その後に『gleam of dawn』が入っていますよね?この“子供の時間と大人の時間の境目”から“人が素直になれる時間”へと移って行くあたりの流れは、ご自身でも何か意識されたところはあったんでしょうか?
「うん。今まであんまりそういうことを訊かれたことは無かったんですけど、実はこのアルバムの中で歌詞を書く時に“サイクル”というモノを凄く感じていたんですよね。例えば年令と共に人んは色んなステージがあって、凄くエネルギーに満ちてギラギラしてる頃もあれば、年をとってだんだん落ち着いて来る時期もあるっていう。そういう一つの流れみたいなモノって、きっと一日の中にも、四季の中にも感じられると思うんだけど、それと似たような感じをね、このアルバムを通 してやりたかったりしたんですよね。特に『gleam of dawn』っていうのは、朝の、非常に生命力に満ち溢れた時間というか。決して、ギラギラとした真昼の太陽みたいな感じじゃないんだけれど、何かのきっかけになるには必要十分なエネルギーに満ち満ちた時間として捕らえているんですよ。」
--物事が動き出す前の、その直前のエネルギーみたいな?
「うん、そう、そう、まさにそんな感じ。で、それはもちろん、僕の中のemotivation=ツキウゴカスモノへと繋がっているんですけど、なんかこうポップコーンの銀紙がパンパンに膨れ上がって来て、中ではもうパンパン、パンパン鳴ってんだけど薄皮一枚で留まってる感じ(笑)っていうのかな、そういう状態なんじゃないかと。」
-- 例えば人としてのサイクルの中には“生と死”というのも当然、あるとは思うんですけど、昨今のアメリカ同時多発テロのような事件の中で、KEMURIがこれまで実践してきたような、音楽の持つ力が成せるPeace…生きる力への助力みたいなモノを訴えて行くということについてはどういう風に捉えてらっしゃいます?
「例えば音楽で何が出来るのかっていうことに対しては、昔はもっと幅広く見てたような気がするのね。 もっと色んなことが出来ると思っていたし、正直、2枚目、3枚目ぐらいのアルバムまでは基本的に僕は“世界”を良くしたいと思って来たの。で、もちろん、それは今でも思ってるけど、でもその前にもっと“日本”を良くしなくちゃいけない。もっと“バンド”を、もっと“自分”を良くしなくちゃいけない…っていうふうに、ちょっとずつ焦点が移って来てるところはある。で、その中でホントに自分たちに出来る事は何なのか?というのを探して行きたいというか…なんか今、全てが個人的なレベルになって来てるんですよね、僕の中で。だから、みんなで手を繋いで全てを良くして行こうっていうのには今は非常に疑問があると言うか。とにかく、偏るのが凄くイヤなんですよ。平和はやっぱり良いねと思うのは理想ではあるんですけど、平和だけで世の中が満たされることが自然かと言ったらそうじゃないと。もちろん、それと反対に争いばっかりが続いてもやっぱり自然じゃないし、すべてはバランスのような気がするわけです。人が死んでいくのは悲しいことだけど、その死から学ぶげきモノだってきっとあるわけだし、ちゃんと向き合うことが大切なんじゃないのかなと。生も死も戦争も平和も含めて、いろんな方法でいろんな角度から見てった方がいいんじゃないかなと思います。もうね、何か一つの型にハマったイデオロギーとか、そういうモノですべてを推し量 ること自体が厳しいと思うんだけど、いまだにそれをやろうとしてる論争みたいなのがあってね、そういうのはちょっと飽き飽きかなぁって。その辺を何とか自分なりに答えを出して行こうと思って、今は歌詞を書いてるんですけどね。まだまだ全然完成形じゃないっていうか、そういう“アーッくそっ、上手くいかねぇなぁ”って、自分の中の理想に向かって突き進みながら髪を掻きむしったりしてる感じが(笑)このアルバムには入っていると思いますよ。なんか、ボーン!って爆発する寸前にどっかにちっちゃい穴が空いて、そこんとこからプシューってエネルギーが出ちゃってる感じ。決して、ダイナミックな大爆発じゃないんだけれど…。」
--どこか“ほとばしり”が感じられるような?
「そうそう。なんか色んなことに関して分かったようなことは言いたくないし、音楽作る人間として常に自分の中にある原動力(ツキウゴカスモノ)を大事にしていきたいというか…カッコつけたりするのはもういいかなって。それよりはもっと自分たちを削っていく感じの方が絶対にいいと僕は思うし、そうやって(自分を)削ることによってそれが燃料となって何かが燃えていくていう、そっちの方がなんか、いいなと思って」
--ということは、もちろんライヴも今まで以上にほとばしる感じで?
「そうですね。とにかくもう、バッって演って“なんかすっごい短かったね。でも1時間半も演ってたんだ?!”みたいな。キュッと内容の詰まったクオリティの高いライヴを演りたいなと。まぁ、それが実際にバンドでどこまで出来るかっていうのは、これからの練習次第ですけどね(笑)。やっぱり今回、レコーディングしてて思ったのは、ホントに音楽って楽しいなということだったんで、それを持続させることが出来たらいいなと思うし、それを見てくれた人が“音楽って楽しいんだなぁ”って、そういうふうに…結果 として思ってくれると思うもんね、自分たちがそういうふうに演ってればね。だからライヴはそういうふうに演りたいと思うし、そういえば、福岡で一番最初に演ったライヴがいまだに忘れられなくてね。野外だったんですけど、お客さんがみんなステージに上がって来ちゃって“こんなんじゃ、ライヴ出来ねぇよ!”って、当時居たメンバーが物凄く怒ったくらいすげぇライヴだったんですよ(笑)。あの感じっていうのは今でもやっぱり覚えているし、やっぱ瞬間、瞬間だと思うから、僕らもあれ以上のライヴを常に演りたいと思っているし、見に来る人たちもホントに、もうこれ以上楽しめない!っていうぐらいの感じで来てもらったら、お互いすごい緊張感があって、良いライヴに出来るんじゃないかなと思います」

 

●95年イトウフミオ(VO)とツダノリアキ(Ba)の2人で初ライヴを行ない“KEMURI”というバンド名を名乗るようになる。97年6月デビュー・アルバム『Little Playmate』リリース。以後現在までに5枚のアルバム、4枚のシングルをリリース。バンド哲学として<P・M・A(POSITIVE MENTAL ATTITUDE→肯定的な精神姿勢)>を掲げ、メッセージ性の強い歌詞、ダイナミックなサウンド&パフォーマンスで国内外のロック・ファンから高い支持を得ている。FUJI ROCK、Sky Jamboreeといったサマー・フェスへの参加も最早常連といった感じで、ミュージシャン仲間からの信頼も篤い。現メンバーはイトウ、ツダの他のヒラヤショウジ(Drs.)、ミナミヒデノリ(Gu)、モリムラリョウスケ(Trp)、コバヤシケン(Sax)の全6名
◆◆◆KEMURI オフィシャルHP◆◆◆
http://kemuri.com/
■NEW SINGLE
『five o'clock at night』
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■4th ALBUM
『emotivation』
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