春は君を想い 夏は風に抱かれ
秋は君を歌い 冬は春を願う (宮沢和史『沖縄に降る雪』)
インタビュー・構成/なかしまさおり TEXT by Saori Nakashima
 
写真/山田トモフミ  PHOTO by Tomofumi Yamada

SPECIAL INTERVIEW

 今年の春から夏にかけ、THE BOOMが各地で行なってきたツアー“青空の下、星空のもとで”は実にユニークな試みだった。町の大小、会場の規模を問わず、さまざまな年齢層の人たちに“より近い場所で”歌を届けること。簡単なようだが、すでに既成のフォーマットの中で動くことが通 常となっている業界においては、なかなかそれを実現させることは難しい。だが、THE BOOMは見事に実現させた。もちろん、そこには「多くの人の協力があってこそ」と宮沢は言うが、このツアーに足を運んだ人にとっては、何ものにも代え難い想い出の一部となったことは間違いない。そこで今回は11月にソロ・シングル、ソロ・アルバムをリリースする宮沢にツアーを振り返ってもらいつつ、THE BOOMとしての今後、ソロ・ライヴについて語ってもらった。


--まず、ツアーを終えられての率直な感想からお聞きしたいのですが。
「僕らもともと道端で2年半演っていて、外で歌うっていうことも好きだったんですけど、やっぱり持っていた以上に楽しくて。中にはホール・コンサートもあったんですけど、自分の街で見るライヴ…しかも空の下、通 い慣れた道を通って会場に行って、見た人からも“嬉しい”って言ってもらって、やって良かったなと想いましたね。だから来年、再来年…どのくらい時間がかかるか分からないんですけど、全県回ってやろうかな、みたいな想いも既にあります。やっぱり普通 に考えるコンサートというのは、まず演る内容、曲があって、その曲を再現するためのメンバー、スタッフ…っていう、先にソフトが決まってからホールを押さえていくんですけど、今回はとにかく会場を見つけて、ここで演るには誰と話し合えばいいのか、だったら何が出来るか…みたいなとこからスタートしたんで、全てが逆の発想でしたね。まぁ、それも12年(THE BOOMを)やってきて、ストックが百数十曲あるから今だからこそ、演れることなのかなぁとも想いましたけど、THE BOOMとしてはそうやって“歌を直接届けに行く、手渡しに行く”というのが今の目標、全てだとも思ってますから。ただ、それをやるには少なく見積もっても2年はかかるだろうし、今後のTHE BOOMの活動はそれに集中していこうかなと。」
--場所によってはツアーの合間に詩の朗読会(“未完の夜”)もやってらっしゃったそうなんですが。
「ええ。以前から詩の朗読はやってみようと思ってたんですけれども、やっぱり勇気がいるし、ちょっと怖かったんですよ。お金取って、詩を朗読して成り立つもんかなぁと。でも、思い切ってやってみたら手応えを感じたし、お客さんも喜んでくれたみたいで。やっぱり、言葉だけで時間が満たされるっていうのは、みんな経験が無いと思うんですよ。僕も今回初めてだったし。でも、来てくれた人は、すごくシンプルなことなんだけど楽しいぞって思ってくれたと思うんですね。そこにすごく可能性を感じた。僕はあんまりパフォーマンス的な朗読っていうのは好きじゃ無いんです。演劇くさいっていうか…言葉が主役なのにそれ以外のことに労力を注ぐでしょ?(笑)あれは本末転倒な気がして。僕は淡々と伝えるっていう手法なんですけど、やっぱり言葉で心が動いて欲しい、言葉の中で“言葉がパフォーマンス”してほしいから。今度、その朗読会の模様がDVDになるんですけど、これは一生やってこうかと思ってますね。」

 --そういう詩の朗読会も間にやりつつの長い長いツアーが終わり、今度はいよいよソロ・ワークの再開ですか。今回のアルバム『MIYAZAWA』はブラジル、アルゼンチン、ニューヨーク、東京、沖縄と複数の都市を渡り歩いてのレコーディングだったそうですね。
「ええ。前回(『AFROSICK』)はブラジルに一人で飛び込んでって、向こうの流儀に合わせて演るところで快感を感じていたり、そういう興味で作りましたけど、今度は本当に自分自身に、より外のミュージシャンを近付けるというか。まぁ12年もやっていると色んなネットワークも出来てくるし、そういう人たちと一緒に宮沢像を作り上げようみたいなところで、前作で得た演り方を引き継ぎつつも、またその先を行くという方法論でやりました。まぁ、今度の作品もブラジルの要素が多いんで、最初はアフロなんとかとかそういうタイトルにしようかと思ったんですけど、特にブラジルを意識しているわけでもないし、自然とそこにあるものだから今回はただの『MIYAZAWA』かなぁと。やっぱり世界中…そんなに僕も広くは知らないけれど、自分がシンパシーを感じるようなミュージシャンと話ししていると同じようなことを考えてるし、こないだの(アメリカの)テロ(事件)でも分かる通 り、何かが地球で起こればタイム・ラグ無くみんな自分のこととして感じるようになったしね。そこで、たまたま遠い所にいるけれども、ブラジルの仲間と一緒に音を出すっていうのは僕にとっては特別 なことじゃないし、特別なことと思ってやってはないですね。」
--ちなみに今回のプロデューサーはアート・リンゼイ。
「ええ。『AFROSICK』はプロデューサーがミュージシャンだったんで、ワイワイ、ガヤガヤ現場で作ってくって感じだったんだけど、アート・リンゼイはミュージシャンではないんで、そういうワン・クッション…僕がもし一人で作ってたら偏ってしまうようなところを上手く中和してくれましたね。(だから)僕自身も自分の作品なのに、俯瞰から見れるような目線がムードとして中に出来ているし、独りよがりにならないように非常に上手くやってくれましたね。」
--アルバムに先行してシングル『沖縄に降る雪』も出ましたが、これはPVを『ナビィの恋』の中江裕司監督が撮影されたそうで。
「うん。あの映画、僕大好きだし、今までいろんな沖縄映画を観てきたけど一番だと思うんですよ。僕も東京っていう所で沖縄をいつも想っているんだけど、あの映画の中の、ブラジルへ渡ったサンラーという男と自分を照らし合わせて作ったところもあって、少なからず影響はあると思う。それで、PV作るんだったら中江さんだろうということで、『島唄』のPVの時にも手伝ってくれたんで、話したら、すごい盛り上がってくれて。“じゃあ『ナビィの恋』のシーンどんどん使いましょうよ”って、監督だから使いたい放題なわけですよ(笑)。で、上手く、そのサンラーと宮沢がPVの中でダブって。僕があたかも映画の中に入ったかのようになったんですよね。」
--宮沢さんにとっては“ブラジル”も“沖縄”も、常に宮沢さんを媒介してそこに存在している、大切なものなんですね。そういえば、これまでに書かれた沖縄に関する曲をアルバム1枚にまとめる構想があるとか?
「えぇ。12年間愛した…もちろん、これからも愛していくでしょうけど、そういう沖縄への想いをとにかく1枚の作品にしようということで、THE BOOMとして来月ぐらいから録り始めます。まぁ、ほとんどが新しく録り直すんですけど、その分、“今の”THE BOOMの音になるんでしょうし、これからの“変わらぬ沖縄への愛の誓い”にもなるんじゃないかと思います。」
--ということは、THE BOOMとしても活動とソロ・ワークというのは、今後は同時進行していくわけですね?
「うん。前は完全に切り離してやってたんですけど、今は同時にやることで僕の中での棲み分けというか、そういうものをより分かってもらえるんじゃないかと。まぁ、身体は一個しかないんで、大変っちゃあ大変なんですけど(笑)、単純に同じ期間に2枚アルバムが出るわけですから、僕とTHE BOOMの世界を倍楽しむぐらいの気持ちで聴いてほしいですね。結局、あれもやりたいな、これもやりたいなと思っていても最終的にはやらなかったことが多かったんで、今はなるべく思い立ったらすぐやるというふうには思ってます。」
--そう思われるようになった転機というのが何かあるんでしょうか?
「特には無いけど…今、ドラマ(『恋を何年休んでますか』)をやってるんですね。以前にも『二千年の恋』っていうのをやって、あれもひとつの転機だったかもしれないですね。あの後、『I don't wanna say No』っていう、イヤだっていうのをやめようっていう歌を書いて。目の前に船が来たら飛び乗っちゃえっていう。“溺れるのが怖いから飛び下りない”っていうのをやめたんですけど、それはドラマの影響があったかもしれないですね。もともと出たくて出たわけじゃなくて、さんざん断ったんですけど(笑)、でも結果 的にはやって良かったなと。」
--1月6日にはZepp Fukuokaでのライヴが控えていますが。スタンディングというシチュエーションは宮沢さんにとって久しぶりでは?
「久しぶりですね。せっかくだからTHE BOOMとは違う気分で聴いてほしいし、踊ってほしいなとは思ってて、ツアー・メンバーも最強です(笑)。ギターが高野(寛)君。ドラムがゲンタ君。もともとはBINGO BONGOのパーカッショニストだったんですけど、今は山崎まさよしさんとかbirdとかをやってる人で、ベースはレピッシュのTATSU君。あと『AFROSICK』の時にプロデューサーだったマルコス・スザーノも参加してくれて。やっぱり、バンドを作るっていうのはワクワクしますし、そのワクワクが音になればいいなと。まぁ、ダイエー(ホークス)ファンの僕としては今年、近鉄(バッファローズ)が優勝したのがちょっと解せないですけど(笑)、来年は日本一という思い込めて。」
--そうですね。じゃあ、来年ホークスが優勝したら、その時には何か福岡で…。
「やりましょうかね。僕が那珂川に飛び込みましょう(笑)」
--ホントですか!?是非、楽しみにしています(笑)

THE BOOM
青空の下、星空のもとで
UNDER THE BLUE SKY,SHINING STARS.

□ツアーへの想い…
「博多は僕らも何回行ったか分かんないぐらい行ってるんですけど、いわゆる野外で気持ちよく演れる所が海の中道ぐらいしかないんですよね。でも、それだとちょっと規模が大き過ぎるし、市内から行くのも不便だし、もっと街に近い所で出来ないもんかなとは以前から思ってたんですけど。 BEAさんがホントに文字どおりゼロから立ち上げて、役所の人と交渉に交渉を重ねてくれて、実現して。(博多港は周囲の)景色がどんどん変わっていくんですよね。海上自衛隊にニラまれたり(笑)、横に碇泊していた船がいなくなったり…刻一刻と(景色が)変わっていっくところも今回のツアーの主旨に凄く合ってたかもしれないですね。 だから、もし許されるならば、THE BOOMが福岡の野外で演るっていう時にはあそこ(博多港)で演るっていうような状況をね、これで作って認知してもらえたらいいなと思っています。」
□各地で開催されている写真展について…
「音楽って3、4分で終わっちゃうじゃないですか。絵みたいにいつまでも見てるわけにはいかない。コンサートだって2時間半終わったら無に戻っちゃうでしょ。でも写 真展っていうのは1日見ててもいいわけだから、THE BOOMの歌の世界を1日楽しんでもらえる。もちろん、そこに直接、音楽は無いけれども、その音楽が流れていたっていう事実は克明に残っているわけで。すごくいい企画だなぁと思いましたね。撮ってくれた中川正子さんは今回のツアーから出会った人で。僕らと旅をしてる間にTHE BOOMのことを知っていって、その中で自分の写真というものを探っていったところがあるし、よりリアルなんですよね」
4/28(土)・29(日)大阪城野外音楽堂 5/3(木・祝)博多港イベントバース 5/5(土・祝)信濃川やすらぎ堤(新潟市) 5/12(土)・13(日)日比谷野外大音楽堂 5/26(土)みなとまち海浜公園夕陽ドーム(新潟県柏崎市) 6/3(日)四国村農村歌舞伎舞台(高松市) 6/9(土)マリーナ河芸野外特設ステージ(三重県) 6/16(土)奈良県文化会館 6/17(日)ひこね市文化ブラザ(滋賀県彦根市) 6/23(土)西土佐ふれあいホール(高知県幡多郡西土佐村) 6/30(土)稚内総合文化センター(北海道稚内市) 7/13(金)三宅高校体育館(東京都あきる野市) 7/29(日)"青空の下、星空のもとで万博スペシャル"大阪・万博もみじ川芝生広場 8/31(金)旧日蘭広場特設ステージ(長崎県長崎市) 9/2(日)青空の下、星空のもとでファイナル"そこが僕のふるさと"甲斐風土記の丘野外ステージ(山梨県東八代郡中道町)※一部イベント省略
THE BOOM
青空の下、星空のもとで
写真展
18日間に渡って開催された福岡写真展。ツアーに同行した中川さんの写 真に加えて、博多港イベントバースで撮影の山田トモフミ(BEA VOICE担当カメラマン)の写 真も展示。大きなスクリーンで貴重な秘蔵映像も流れる中、連日、たくさんのお客様が写 真展を楽しみました。 最終日の11/10(土)には、「栃木孝夫(THE BOOM)&中川正子(フォトグラファー)のトークショーを開催。気になるツアーの裏話、撮影秘話など、たっぷり聞かせて頂きました。
期間中のアンケートより、「THE BOOMのツアーで来年来て欲しい場所・ベスト5」を発表。1位はもちろん「博多港イベントバース」。2位 「海の中道」3位「佐賀・バルーンフェスタ」4位「長崎」5位「若松グリーンパーク」。他には「大濠公園」「能古野」「小倉城」「筑後川河川敷」「私の家」…という答えも。

●宮沢和史/'66年甲府生まれ。THE BOOMのヴォーカリストとして'89年にデビュー。'98年には単身、ロンドンとブラジルへ渡り2枚のソロ・アルバムを制作。国境、あるいはサウンドとしてのジャンルを軽々と飛び越え、自らの歌の世界を追求していく姿は世代、性別 を問わず幅広いファン層に支持を得ている。また、音楽活動以外にもエッセイの連載、ドラマ、映画への出演、詩の朗読会など幅広い活動を行なっている。

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『沖縄に降る雪』
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■3rd ALBUM
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■DVD&VIDEO作品
宮沢和史
●ポエトリー・リーディング・ライブ
『未完の夜』
東芝EMI/VHS・DVD各\3,000(tax in)/NOW ON SALE
■BOOK
宮沢和史全歌詞集1989-2001
河出書房新社\2,800(tax in)/NOW ON SALE
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