キングスネーク伝説

back
back

Legend of KingSnake

【おいらのロックンロールの夜明け】

誰にでも「これがなかったら今の私は有りません」というものが、きっと有るだろうう。
僕にとってのそれは「ユエンナシッンバラ、ハーンドッグ」で始まる一枚のレコードだった。それまでの僕はと言うと、三波春夫、村田英雄の歌声が聞こえてくると、一緒に歌い出すほどだった。もう少し年をとっていたら、きっと、その世界から抜け出さずに浪花節でも聞いている親父になっていたかもしれない。
何はともあれ、ロックンロールの熱い洗礼を受けてしまったのは小学校5年生のある土曜日だった。エレキ・バンドをやっていた従兄弟の部屋で、聞いたエルヴィス・プレスリーの「ハウンド・ドッグ/冷たくしないで」のシングル盤だった。
その部屋には、「監獄ロック」、「トラブル」なんかが、これがロックンロールだっと言わんばかりに僕を待ち受けていた。それからというもの、学校に行く前はもちろん、帰ってきてからも、借り物のポータブルプレイヤーでレコードをグルグルまわす日々が続く毎日だった。
ラジオのチューナーも今までとは違う番組を捜し当てるのに大忙しになってしまい、昨日までの僕とはまったく違う世界に入ってしまった。ワクワクするほど楽しいエルヴィスのロックンロールの世界。ラジオではいつでも最新のポピュラー・ミュージックが流れて来たが、ほんとに聞きたいと思っていたのはエルヴィスだけだった。ヴェンチャーズやビートルズを耳にするまで、そんな日々が続いた。
あのエレキ・サウンドに痺れあがってベンチャーズ、アストロノーツ、スプートニクス、サウンズそれにシャドウズやジョーカーズをシングル盤やコンパクト盤で聞きまくっていた。ボンボラのアトランティックス、パイプラインのシャンティーズ、ワイプ・アウトのサファリーズ、悲しきヤングラブのレ・プレイヤーズ等の一発屋となってしまった曲もあった。福岡の中年以上の人には曲名は知らなくても一度は聞いた事のあるウィリーと彼のジャイアンツの「心のときめき」も忘れられない曲の一つだ。この曲はKBC九州朝日放送の夕方のラジオ番組「小城まさひろのドライブ・イン・ミュージック」のテーマ・ソングとして毎日流れていた。
同局の後の「ヤング・ポップス」(クロスFMのあのガッメニィ松井伸一氏のロック番組)のテーマソングとなったシャドウズの「スコッチ・オン・ザ・ソックス」と並ぶ名曲だ。
「ユーッノアミーッツショウ、ィエーラー」、これが僕が初めて聞いたジョン、ポール、ジョージ&リンゴだった。エルヴィスはエルヴィスでロックンロールだったけど、エレキを自分達で演奏しながら歌いまくるビートルズは二回目の「これがなかったら」だったのだろう。それからというもの、アニマルズ、ローリング・ストーンズ、サーチャーズ・・・いわゆるリバプールサウンドにのめり込む毎日だった。
1964年の熱い夏、「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」という長いタイトルの映画を見に行った。この映画を見て、人生が変わった人間は世界中にいっぱい居る事だろう。強烈に鮮烈な、こんなかっこいいロックンロールがあるなんて、イギリスってなんて素晴らしいとこなんだろうって思っていた。
その年の寒い日、「ヘルプ」を見に行った。日曜日の朝、9時までに入場すると割引料金になるんで土曜日よりも早起きして、スカラ座に行った。当時、ポータブル・カセット・デッキなんてなかったから音はとれないけど、写真はとれる。スクリーンに写るビートルズ映画の生写真を撮って、ファンの女の子に売ったりしていた。
ところがテープレコーダー、もちろんカセットなんか生まれていないから当然、オープンリールのテープだが、「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」の映画館実況録音テープを同級生の姉さんから聞かせてもらった時には驚いた。女子高生は昔からスゴイ事をやってのけるものだ。テープ・レコーダーを映画館に持ち込むまでは納得できるが、電源をどうやって確保したのか・・・「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を見に行った回数の違いだけではないのだろうと思いながらテープを聞いていたら、ガチャン・カタカタカタ・・・ジュース瓶が転がっていく音がちゃんと聞こえた。1,000円も有れば、映画見て、昼飯喰って、ガンコーナーでちょっと遊んで帰れる時代だった。
今でこそ、ビデオがあるからほんの数千円で欲しいビデオがすぐに買えるけど、僕の友だちの一人には忘れられない話がある。彼は今でも、当然のごとくビートルズファンであるが、中学生の時アルバイトして金を貯めた。30年以上昔の中学生からすると大金をポケットに、某映画会社のドアを意気揚々と開けた。
「ヤァ!ヤァ!ヤァ!のフィルムを売って下さい」と言った。
映画会社の人は、この馬鹿と言いたげな顔をして
「映画のフイルマァたっかとよ」
中学生曰く
「バイトして金貯めたけん」
今の中学生は、こんな事やろうとも思わないことだろう。

next