キングスネーク伝説

back
back

Legend of KingSnake

【モズライトハンドメイドモデル】

あの愛しの音楽教師の暖かい愛情に支えられ手作りエレキの設計を始めた。
ネックの長さとかフレットの長さは、計算用紙を何枚も使えば簡単に出来た。デンタクが有ればもっと簡単だろうけど、時代が違う。計算間違いは生まれついての音痴になってしまう。数学赤点のおいらでも喜んで検算まで苦もなくやってしまった。
ネックの材料も特別な物なんか有るわけもない、家のまわりや材木屋の切れ端の中から堅そうな乾燥した棒っきれを数本集めてきた。ボディの材料は材木屋のせがれに売りものを切って来させた。ボディを何にするか。フェンダー・ジャガー、ジョンのリッケンバッカー、ブライアン・ジョーンズのティア・ドロップも考えた、バーンズ・ハンク・マーヴィン・モデルも良い。でも、なぜかモズライト・ヴェンチャーズ・モデルに決めた。
本物そっくりに作りたかったから、写真だけじゃ物足りないので楽器屋の売り物を採寸したりもした。設計図というか、裁縫の型紙のようなものを作り、パーツの配置やデザインをあれこれと仕上げて行った。子供心に、設計図に描かれたエレキからはノーキー・エドワーズと同じ音色が出そうな出来映えだ。弦巻、ブリッジそれにフレット仕切やスイッチも揃ったが、トレモロ・アームとギター・マイク(ピック・アップという呼び方は知らなかった)には困った。トレモロ・アームとブリッジは友人の父親が鉄工所を経営していたので、頼み込んで何とか形になった。
ギター・マイクは本物のパーツを買うしかないが、それすらままならない。挙げ句の果て、木を細工して外見だけのものを作りボディーに接着して、ギターマイクはとりあえずテープレコーダーの小さなマイクを取り付けてしまった。ピック・アップとかのパーツはしょうが無いけど、姿形はアメリカの電気ギターの王様モデルそっくり(と思っていた)に出来上がった。
ギターに気をとられていて忘れていた訳じゃないが、アンプが無い。
少しは考えていたから、一日で出来あがった。外部入力端子が付いているラジオがボリュームとトーンだけのギター・アンプに早変わり、と思って頂けば良い。ジャックはちゃんと取り付けた、あとはモズライト・ハンド・メイド・モデルをグヤ・トーンのコードでつなぐだけ。アンプのスイッチON、アンプ(?)のボリュームとギターマイクにハンダづけしてギターボディーに埋め込んだボリュームを少し上げて、弦を爪弾く。出たーっ。これぞエレキ・サウンド。まさしく電気的に増幅されただけの弦の振るえる音、フレットをすべる指がこすれる音もいやっちゅーぐらいに生々しく伝わってくる。ビートルズのアイ・フィール・ファインのイントロのヴォッニョーンだけは誰にも負けない音が簡単に出せるギターとして生まれた。
だが、モズライト・ハンド・メイド・モデルを演奏するには、弦の上で指をすべらせてはいけないという条件がついてしまった。この問題を解決した時、ボディに盲腸のようなクラシックギター用のピックアップが目立つ、名付けてモズライト・田端義夫・モデルに生まれ変わっていた。
それ以前に解っていた事だが、どうもこのギター、音痴なのだ。
パイプラインのデケデケデデケは、苦労の甲斐があったと思うのだが、高音域に入ると必ずミス・トーンしてしまう。計算は間違いなかったが、四捨五入と鋸目の不正確さでほんのわずかではあるがフレットの1弦のところと6弦のところの間隔が違う箇所があったのだ。フレットレスならまだしも傾斜フレットではどうしようもない。やっぱり、本物のエレキが欲しいと思う日が訪れてしまった。

next