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- 【ビートルズTVライブ】
東京公演がテレビで一回だけ放送される事となった。一度だけと言われると2度3度見たくなるのが人情だ。
まだβもVHSもない時代だから、音を録音するしかないのだ。今の世の中、家庭で映像をHiFiで録画できるのだから当時の苦汁は解ってもらえないだろう。
テレビには映像・音声の入力(In put)端子はもちろん出力(Out put)端子もない。音声出力端子が有っても、イヤー・ホンだからこれを使えば音が聞こえなくなるのだ。テープレコーダーなんて有る家は本当に少ない。僕の家にも当然ない、もう、だめだ。
ところが、僕の親父が「ビートルズのテレビばテープぃとるとや(音声のみ)」
「ん、ばってんテープ・レコーダーのなかけん」
出来もせん事ば言わんっちゃ良かろうもんと言いたげにブスッと答えた。
「テープば買いきったら、テープレコーダーは借りて来ちゃーぜ」
「うそっ!?」
「いつ(放送が)あるとや」
僕の親父は、友達に言わせると「親子や?兄貴かなんかのごたぁもん」と言われていた。年が若いわけでもない、彼らの父親はしないような事をよくやってしまう事が有ったからだ。
この時も、ウレシイどころではない。武道館に行けなかったのだから、この程度の事はと思っていたのかも知れない。ビートルズTVライブの前日、親父がテープ・レコーダーを持って帰ってきたのだ。
録音方法なんか知るわけもない、色々と試してみた結果、布で二重三重に包み込んだマイクをビニール・テープでテレビのスピーカーの前に固定したのだ。これでも歓声でも出そうものなら、雑音として拾いかねない。テレビのボリュームを上げ、静かに見なければならない。テレビの音声を録音、再生した結果、申し分ない。
「ウェーッカーム、ビートゥルーズ」がついに始まった、ボリュームはいつもより大きくしている。内田裕也、尾藤イサオ、スパイダース、寺内タケシ&ブルー・ジーンズ、ザ・ドリフターズ(志村けんはいない)といった考えられないほどバンドの出演時間が短く、盛り上がらない、時間稼ぎとしか思えない前座の一時間が終わってビートルズがもうすぐ登場する。
後は後年ビデオで見る通りだ。
翌日、学校では「見たや」「見たや」と騒いでいるが、どういう理由
か「見ていない」と言う奴もいた。「よかねぇ、俺見損のうた」と言う
かわいそうな奴がいたが、わが家のステレオでけっこう大きな音(サウ
ンドと言うにはちょっと難しい)で聞く事が出来た。それもビートルズ
のテレビのナマ写真を見ながら。そ、勿論、TVの前で写真も撮りまくっていたのだった。

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