キングスネーク伝説

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Legend of KingSnake

【夜明けのビートルズTVライブ】

 ビートルズ来日公演から一年が経とうとしていた。
彼らはコンサート活動を止めてしまった。どうせ二度と日本へ来る事はないと思っていた僕にとっては、大ニュースではなかった。そんな彼らを久しぶりにテレビで見る事ができる日がやってきた。それも、衛星中継でイギリスと同時だ。
 コンサート活動は行わないもののサージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドというタイトルの長さ以上に長い間にわたり多くのロック・ファンの心に残るアルバムを作った彼らが、全世界に向けて発表されるのはどんな曲なんだろう。
高校二年の六月のある日、と言うより明け方四時過ぎにビートルズが登場するそうだ。イギリスと日本の「時差」を日本に居ながらにして実感する日がやって来た。夕方寝て、夜中に起きてテレビを見ようと思って、夕食後寝る事にした。横になったもののなかなか寝つけない。期待と興奮で眠れないまま、翌朝まで待つ事となった。
 レコードを聞いたり、ラジオを聞いたりして四時まで一睡もせずに待っていた。四時少し前、テレビのスイッチを入れるとどこか外国の風景とかが映っていた。(今となっては、ビートルズが出ていた前後の放送内容はまったく覚えてはいないが。) ブラスのイントロで曲が始まった。その時のビートルズはサージェント・ペッパーの見開きジャケットの写真の顔つきと思えた。オール・ユー・ニード・イズ・ラブというこの曲は、この瞬間世界中で流れている。何百万、何千万人というファンが時差をものともせずテレビの前に釘付けになっているのだろうと思いながら、見ていた。
テレビに映し出されるスタジオには、たくさんの関係者(?)が来ているらしい。なんとブライアン・ジョーンズやミック・ジャガーもいる。
やっぱり彼らはトモダチなんだ。何の意味もない事だが、妙に嬉しくなったりしていたら、もう終わりそうだ。長いエンディングもかっこいいと思っていると突然ジョンがシー・ラブズ・ユーのワン・フレーズを歌った。
あのハンブル・パイの二枚組ライブ・アルバムのローリング・ストーンのエンディングと共にベスト・エンディングだ(もちろん、この時点ではつゆ知らずだが)。数分間の時が過ぎ、ビートルズと僕をつなぐ廊下の扉は閉じられた。
 現実がワッと襲いかかって来る。睡魔だ。少しでも眠ると、もう起きられそうにない。一睡もしないまま学校へ行った。眠たそうな目をしているのは僕だけだ。
「朝、見たとや?夜、再放送があろうが」
「お前達ゃ、いっちょん判っとらんね。」僕は日の出前の数分の間に、ロックとは一生つき合って行きそうな気がした。
 約一か月後、オール・ユー・ニード・イズ・ラブは「愛こそはすべて」というタイトルでシングル盤が発売された。もちろん、発売日に買った。
 往年のロックではないが、やっぱり彼らは凄い。プレスリー大好きのまま、この曲を聞いても好きにならなかっただろう。「ミート・ザ・ビートルズ」に始まり「ビートルズ65」で大ロックンロール大会、ラバー・ソウル、リボルバーへ、そして万華鏡のようなサージェント・ペッパーに到るメタモーファシスにつき合えた者だけが、この時間を共有したのだ。後年、僕の口ぐせとなった言葉はこの日から僕の胸の中で頭をもたげていたのだろう。
 「ビートルズ・ファンは柔軟に、広く深くあらゆる音楽に興味を持てるが、グランド・ファンクからロックに入った者はそこへ留まるしかない。」

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