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- 【まじめな合宿】
夏休みにはガッシュクしようとドラマーが言い出した。
体育会系のクラブ活動なら合宿もできるだろうが、四人でどうやって合宿をしようと言うのか。今の練習時間ではレパートリーもなかなか増えないし、いいバンドにするには夏休みに徹底的に練習しようと言うのだ。 もっともな考えだ。しかし、昼間の練習はリード・ギターの親父が許可するわけも
ないし、無理だと言うと、待ってましたとばかりドラマー君が「あのぉ、俺の親戚が海んとこい別荘持っとうったい。貸して良かってやけん。ボリュームは上げられんかもしれんばってん。」
「あそこやったら1組の武田んがたが海の家ばしようけんバイトもできるぜ」こうなったらレッツ・ガッシュクしかない。
一学期も終わって、待ちに待ったガッシュクの為の夏休みがやって来る。 成績表を見るよりも合宿のスケジュールや練習する曲を決めるのに忙しい終業式、我が二年七組は体育館の掃除当番だ。リードギター君、リズムギター君とベースマンの僕達は箒を手にして、合宿で練習する曲をあれやこれや話していた。
「グループ・サウンズやらしとうなかろう」 「だいたいあいつはなんば考えとうとかいな」 「ばってん、あいつも頑張りようし、ドラム持っとう奴がおらんめえが」
とにかく、合宿が終わるまでは今のメンバーで続けようという話しになったものの、我らロックンローラーにはグーループサウンズの真似をするのは耐え難い事だった。
エレキを持って、ドラムを叩いていてもグループサウンズは絶対にロックではなく歌謡曲でしかないのだ。グループ・サウンズの作曲家が歌謡曲の作曲家だからというのも理由の一つだが、それだけではない。
例えば、僕らのバンドのレパートリーとなったテンプターズの「今日を生きよう」と言う曲はアメリカのグラス・ルーツというバンドのちょいヒット「レッツ・リブ・フォー・トゥデイ」という、こ気味良い曲のカバーなのだが、テンプターズにかかるとイントロのギターからして歌謡曲になってしまうのだ。言ってみればサウンドがロックではなく歌謡曲そのものなのだ。
テンプターズそのものはストーンズやビートルズに憧れてバンドを組んで「サティスファクション」や「抱きしめたい」なんかをダンス・ホールで演奏していたのだろうが、芸能プロダクションにスカウトされた幸運と引換に毒にも薬にもならないグルー・サウンズになってしまったに違いない。
僕らにもそんなチャンスがやってくるとしたら、どうするだろう。その日を現実のものとするには練習しかない。
ガッシュクはファーストステップだ。リード・ギター君の親父の会社のトラックで別荘まで楽器を運んでもらった後、僕らは一組の武田んがたの海の家に行った。明日から朝11時から夕方5時まで働く事になった、但し四人も要らないから二人づつ交替という事になった。毎朝10時半までと夜が練習の時間だ。
その日は楽器をセットしていつもやっている曲を数回練習して、晩飯の準備をした。三日間は食えるほどのカレーが出来上がった。カレーを食べ、コーラを飲みながら明日からの事を話していると、グループサウンズの事も頭っからどうでもいい問題のように思え始めた。
学校に行っている日には考えられない6時という時間には顔洗って、歯もみがき、8時には朝食のあとかたずけも終わるという早業をやってのける毎日だ。そしてすぐに練習開始。
初めて練習する曲はレコードを聞きながら、確認するように練習した。夜は夜で、6時過ぎから10時頃まで練習した。レパートリーもどんどん増えていく。ボーカルはビートルズのように、自分が歌いたい曲は自分で歌い誰もがボーカルをやる。
もちろん、GSの曲はドラマー君の担当だ。
練習時間はもう少し欲しいとは思っていたが、二人分のアルバイト収入は僕らにとって快適な共同生活をもたらしてくれても、つりが残せるものだった。

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