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- 【ビーチ・ボーイ達】
ある夜、泳ぎに行った。
海の家も営業していて、ジュークボックスがサーフィンサウンドやエレキサウンドを立て続けに響かせていた。
ビーチ・ボーイズのファン・ファン・ファン、サーフィンU.S.A、ベンチャーズのワイプ・アウトやパイプ・ラインがよくリクエストされているようだ。きっとVANかJUNのコッパンやジャケットを着てロゴ・マークが印刷された紙袋を小脇に抱えているに違いなさそうな大学生か社会人とおぼしき連中がたむろしている。
僕らもジュークボックスの所へ行き一曲づつ選んだ。ちょっと古い曲だが、テリー・スタッフォードの「サスピション」を選んだ。エブリタイマソーユー・・・サスピショーンが聞こえてくる、去年の夏休みにキャンプに行ったとき何度となく聞いた忘れられない歌だ。
この曲は絶対に夏の夜の砂浜で聞くものだと中年になった今でも思っているし、と同時に思春期の胸の高鳴りと一生に一度しかない瞬間を思い起こさせる、僕にとって記念すべき歌なのだ。
サイドギター君が「なんニヤついとーとや。男ばっかりやけん飲むぐらいせんと」と言いながらビールがなみなみと注がれたコップを二つ手にしてこちらへと歩いてくる。
「ビーチ・ボーイは女なしじゃ艶つけられんもんね。」
「お前、飲むとやったと?。知らんやった、あいつたちゃ?」
「飲みきらんげな」
男二人で夜の砂浜で飲むビールは爽快だが、気を大きくさせるのに時間はかからなかった。
バンドのレパートリーも30曲を越えたし、演奏会をしようとサイドギター君が言い出した。誰が聞きに来るのかあてもないのに演奏会など出来るはずもない。
第一に場所がないと話しているところへ、リードギター君とドラマー君がコーラを片手に話しに入ってきた。ドラマー君「あの別荘の横の公園。あそこやったら電気も引かれるったい。管理人にも話したら夕方までやったら良ってやったけん」 「やったけんって、お前いつ話したとや」 「夏休みぃなる前から。どっかで演奏したかったと。日にち決めたら、重松ぃ電話して何十人か連れてきてもらうごとしとぉったい。絶対しょうと思うとったったい。合宿の話しした時に話そうと思ぉとったばって、あんた達がグループサウンズやらせんて言いよったけんバンドも続かんかもしれんと思ーて言わんやったと」
「するや?」
「しょう、しょう」
ビールが手伝ってくれたのか、すんなり決まった。
名前の無いバンドの演奏会ではかっこうがつかない。ずっと使う名前でなくてもいいからバンドの名前をつける事となった。海で演奏するから「ブルー・ネイヴィーズ」とか「シー・サイダーズ」勝手な事ばかり言い出したが、全員が今練習している曲の中で一番かっこいいと思っているサーフィンU.S.Aにちなんで恐れ多くも「ビーチ・ボーイ達(ズ)」とした。

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