キングスネーク伝説

back
back

Legend of KingSnake

【初めての演奏会】

 その日は朝から日本晴れ。天気予報も雲一つ無い上天気だと言っている。
公園へ行ってみると、ビールのケースを幾つも並べた上にコンパネという板を敷き、その周囲を杭で固定した六畳ほどのステージが出来上がっていた。実は、重松と一緒にやってきた連中の中に二十歳の大工をしている男がいて、トラックで運んできたらしい。
公園の角の足洗い場には水が流され、西瓜やジュースの瓶が冷やされていた。今日やって来るという連中はバンド以外の目的でここへ来るに違いない。よぉっし、ROCKを見せつけてやるぞ。
楽屋とか控え室なんか有りもしないから、ステージの裏の木陰で待っていると、ぞくぞくとやってくる。同じクラスの連中が二十人くらい、顔は知っているがクラスも名前もクラスも名前も知らない連中もいる。まったく知らない連中もいる。ロック・コンサートと言うのに学生服できているのも結構多い。時代ですよ、時代。
この頃僕は、ミュージック・ライフで見たジェファーソン・エアプレーンとかドアーズの野外コンサートを夢見ていた。アメリカではヒッピーがサイケデリック・サウンドをやっているというのに、日曜の午後のフリー・コンサートも海の向こうとこっちとでは大違いだ。
僕らはだまったままステージに上がった。コキーン、キンコン、チューニングが終わると定番「ベンチャーズ・メドレー」そして「十番街の殺人」「パイプライン」と誰もが知っているエレキの大ヒット曲でコンサートは始まった。
ボーカルの曲を三曲「サーフィンU.S.A」「エイト・デイズ・ア・ウィーク」「サティスファクション」。「ぃっさいがっさいUSA」と「イキノマツバラ、ハーンドッグ」は大受けだったが、「ヘイヘイ、ヒーヒー、あぽまったーぁ」はやっぱりダメだった。続いてサティスファクションのイントロで リードギター君がつまづいた、耳まで赤面状態だ、サイド・ギター君が何か耳打ちしている。気を取り直して、やり直す、今度はきまりだ。
サイド・ギターがミックになったつもりで歌っている。歌い終わるのを待って、僕が「今日は、どーも。次はドラマー君がここにいる誰かの為に歌います。」
ついにグループ・サウンズだ。「今日を生きよう」「花の首飾り」などを演奏した。
ステージの前では、まるでエキサイト・ショーやゴー・ゴー・フラバルーのように踊っている奴もいる。やっと、僕らも乗ってきた。「テルミー」「朝日のあたる家(アニマルズ)」「ツイスト・アンド・シャウト」「ルート66」が続く、我らビーチ・ボーイ達も余裕が出てきたのか、メンバー紹介をしたり、来てくれた人達の質問に答えたりしていた。
ステージ前の「客」の顔を確認できるようになっていた僕は、うそーっ!なんでと思った。N女子高のあいつが来ている。登下校の途中で見かけて以来、僕はあの娘に首ったけ状態に陥っていたのだ。
ドラマー君の中学の一つ先輩だと言っていた。重松のためにやったようなコンサートだったから、僕もわがままさせてもらおう。メンバーをドラムの所に集めて「曲の追加、最後にビコーズ俺に歌わせて」
「まぁだ、早かろー」
「なんとかなるくさ」と言い合っていたが、ドラマー君が「よしっしょう、訳は後で話しちゃる」で「ビコーズ」を歌う事になった。
 僕はあいつを見つめながら歌っていたが、歌の意味が解ってないんじゃないかと思った。英語だから、それも発音はおかしい、ビコーズ、ビコーザァイラビューの最終小節になってしまった、あーっもう終わったっと思った瞬間「ビコーズ・ビコーズすいとーっ。」とうたってしまった。
僕はベースを持ったまますぐにステージを降りた。三人は手を振り頭を下げながら降りてきた。
「なんやなんや」
「どうしたとや」
「こいつが付きおーてって言うた奴がきとぉったい」
「何や、お前がしかけたとや」
「よかったろっ」と言ってるところへ、昨日から来ていた二人がアンコールだと言ってきた。アンコールなど考えもしていなかったので、嬉しいような情けないような気分だった。
もう歌ものはレパートリーがなかった。よぉし、夏だ、エレキだ、サーフィンだっとばかりに「ドライヴィン・ギター」「ワイプ・アウト」「心のときめき」の三曲を演奏したが、僕は同級生と目が合うと、皆ニタッと笑ってからあいつの方を振り返る始末だから一分でも早くステージを降りたかった。

next