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- 【すいとう】
やんやの喝采の内に初めてのコンサートは終わった。 僕らを含めて全
員が楽しみにしている晩飯の時間だ。
「バンドの人達はなーもせんで良か、出来たら呼びにくるけん」と言われてちょっと偉くなったような気がした。アンプやドラムを片付けて別荘に運び終わり、最後に残っていたギターを片手に僕らはガッシュク所へ歩いて行った。公園から帰り始めている客もいたが、良かったとか頑張れよとか帰らないといけない理由とか声をかけてくれた。ギターをかざして、それに応えた。四人とも黙って歩いていたが、なにかが輝いているように見えたのは他の三人もきっと一緒だなと思えてしようがなかった。
公園を出たところに屋外の炊事場のような所があって十人位が飯ごうでご飯を炊いたり、カレーを作っている。ふと気がつくとカレー班にあいつも交じっていた。重松が「ベースマン君は特別メニューをすいとう人が作ってやりよんしゃーょ」と、心臓が止まりそうなくらいどこからともなく突然言い出した。バンドの三人から小突き回されるはで、僕は内心嬉しかったのかも知れない。でも、あいつは黙って料理を作っているようだった。実のところ、あいつを正視するほどのあつかましさはまだ無かったのだ。
「晩ご飯が出来たよー」という声が聞こえてきた。
僕らは部屋の中でタバコを吸いながら反省会めいた事をしていたが、腰を上げようとした時、外から「アーッ雨」「中に持って行こう」と叫ぶような声が聞こえてきた。窓の外は夕立だ。
楽器を片づけた後で良かったと言っているところへ、仕切りの重松を先頭に料理とか飲物を持った連中がドアを開けてどかどかと入ってきた。とたんに重松が「なんが良かね、もーっしろしかーっ」とぶつかってくる。うるさいオンナだねぇドラマー君もよぉやると感心したりあきれていた。 二十人近く残っているようだ。窮屈だけどまっいいかと、テーブルを並べ変えたり、間仕切りを外して隣の部屋に持って行く時、偶然あいつと鉢合わせになった。目が合ってしまった、一瞬何と言おうかと思った僕より先にあいつが「私も好いとう、今日は来て良かった」と言ったような気がした。夏休みも終わろうかという時ではあるが、いつもの夏休みとは違う今年の夏休みだ。
あいつとは僕が十九歳になるまで楽しい日々が続いたのだ。デイブ・クラークさん有り難う。 ビコーズもいいけどB面の「かっこいい二人」の方が好きだ。もちろん、あいつと一緒に何回も聴いた。
楽しい夏休みが終わり、始業式の日がやってきた。教室で騒いでいると三年の山崎達が三人で、二の七の教室に入って来て、言った。
「おい、お前達くさ、ちょっと話しのあるけん、つきおーちゃりやい」
ビーチ・ホーイ達は、三の八の教室の所にある便所の裏に呼び出された。居るわ、居るわ、不良エレキ・バンドが悪そう達と待ち受けていた。
「貴様達ゃ、のぼせとうっちゃないとや」
「なんがですか」
「キャンプ場で、艶つけたげなやないや」
始業式の日に、僕らはアオアザを作って校門を出る羽目とあいなった。しかし、ロックと愛は、暴力にも負ける事無く、ずっとずっと続いたのだ。

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